宇宙で資源を現地調達する時代へ 〜なぜ小惑星に注目するのか?〜

2026年2月のイベント「カフェバー流れ星」では、株式会社オーレオンスペースシステムズ 代表取締役の若元淳鷹氏をゲストに迎え、「宇宙で資源を現地調達する時代へ 〜なぜ小惑星に注目するのか?〜」をテーマにトークセッションを開催しました。
株式会社オーレオンスペースシステムズは、宇宙資源を活用し、持続可能な宇宙開発の実現を目指すスタートアップです。小惑星資源の活用に着目し、地球から大量の燃料を運ばずに活動できる、新しい宇宙インフラの構築に挑戦しています。宇宙を「使い続けられる場所」に変えることを目標に、次世代の宇宙輸送・資源利用技術の研究開発を進めています。
聞き手は、ABLab代表の伊藤真之。宇宙ビジネス入門者にもわかりやすい形で、「宇宙で資源を調達する」とはどういうことか、なぜ月ではなく小惑星なのか、そしてその実現によって宇宙開発や地球産業はどう変わっていくのかについて、丁寧に掘り下げていきました。
当日は会場参加に加え、ABLab会員向けにオンライン配信も実施。後半の質疑応答では、専門的かつ鋭い質問も相次ぎ、会場全体で未来の宇宙資源活用について考える、非常に熱量の高い時間となりました。
トーク内容のご紹介
宇宙で必要なものは、地球から運ぶしかないのか?
トークの冒頭では、まず現在の宇宙開発の前提が共有されました。
これまで宇宙で必要となる資材や燃料は、基本的に地球から打ち上げて運ぶことが当たり前でした。しかし、今後宇宙での活動が広がり、長期化していくほど、その前提には限界が見えてきます。
若元氏は、宇宙に行くためのコストは今後下がっていく可能性がある一方で、「宇宙で持続的に活動する」という観点では、現地で資源を調達する発想が不可欠になってくると語りました。
地球は太陽系の岩石惑星の中でも重力が大きく、そこから物資を持ち出すこと自体に大きなコストがかかります。だからこそ、宇宙空間で必要なものを宇宙で調達できれば、今後の宇宙開発のあり方は大きく変わる。
そんな問題意識が、オーレオンスペースシステムズの事業の出発点にあります。

なぜ月ではなく、小惑星なのか?
宇宙資源というと、近年は月面資源、特に水資源への注目が高まっています。
その中で、なぜ若元氏は小惑星に着目しているのでしょうか。
その理由として挙げられたのが、「重力」の違いです。
月にも資源はありますが、一度月面に降りてしまうと、再びそこから資源を宇宙空間へ運び出すためにコストがかかります。一方、小惑星は極めて重力が小さいため、資源を採取して宇宙空間へ持ち出すハードルが低いと考えられます。
若元氏は、小惑星の中でも特に金属質小惑星に注目しています。そこには鉄やニッケルに加え、プラチナ族元素などのレアメタルが含まれている可能性があります。
地球では希少な資源を宇宙空間で確保できるなら、それは将来的に大きな価値を持つかもしれません。
“いらない資源”を推進剤に変えるという発想
今回のセッションで特に印象的だったのが、オーレオンスペースシステムズが構想する技術的な独自性です。
若元氏によれば、小惑星から欲しいレアメタルだけを取り出そうとすると、その過程で大量の「不要な成分」が出ます。
同社は、この不要物をただ捨てるのではなく、推進剤として使いながら帰還するというアイデアに挑戦しています。
構想としては、小惑星から採取した資源を宇宙機内で分離し、必要な成分と不要な成分に分ける。その上で、不要な側を射出することで推進力を得る、というものです。
つまり、帰りのための燃料を大量に地球から持っていかなくてもよい可能性があるということです。
この仕組みが実現すれば、輸送コストを大きく下げられるかもしれない。
若元氏は、この点を他社との差別化ポイントの一つとして語りました。
宇宙ならではの難しさにどう挑むか
もちろん、この構想は簡単に実現できるものではありません。会場でも、技術的ハードルに関する質問が多く投げかけられました。
若元氏は、特に重要なポイントとして、宇宙空間で資源を分離しつつ、連続的に射出し続けられるかどうかを挙げました。
若元氏自身も「かなり難しい挑戦である」という認識を率直に示しており、実際にやってみなければ分からない部分も多いと語っていました。
一方で、だからこそスタートアップとして挑む意味がある、という姿勢も印象的でした。
実現までの時間軸は15年スパン
では、この取り組みはどのくらいの時間軸で進んでいくのでしょうか。
若元氏は、まず今後5年ほどで地上実証や地球低軌道での実験を進め、その次の5年で実際の小惑星での実証、さらにその次の5年で本格的な資源回収へとつなげていくイメージを示しました。
すぐに実現する話ではないものの、段階的に技術を積み上げていくロードマップが語られたことで、会場としても「夢物語」ではなく、長期的に形にしていく構想として捉えやすくなったように感じます。

会場からは鋭い質問が続出
後半の質疑応答では、会場から非常に多面的な質問が寄せられました。
たとえば、不要物を宇宙空間に射出することで宇宙ゴミにならないのか、という問いに対しては、射出されるのは高温で融解した微細な粒子であり、いわゆる大きな固形デブリにはなりにくいという考えが示されました。また、衛星が集中する地球近傍ではなく、より広い深宇宙で使うことを前提にし、必要に応じて既存の電気推進などと組み合わせるハイブリッド型を想定していることも説明されました。
また、地球近傍に十分な金属質小惑星が見つかっていないのではないか、という本質的な質問もありました。
これに対し若元氏は、もちろん将来的には自ら探査に取り組く可能性を見据えつつも、まずは「見つけた資源を運べる技術」を先に確立することが重要だと説明しました。宇宙で資源が見つかっても、地球や宇宙空間で活用できる形で運べなければ価値になりにくい。だからこそ、先に輸送の手段を持つことに意味がある、という考え方です。
さらに、深海資源開発との競争可能性や、レアメタル市場への影響、実際のコスト感など、ビジネス面の質問も相次ぎました。
若元氏は、たとえばプラチナ族元素についてはすでに需給が逼迫している状況があり、仮に数トン〜数十トン規模で供給できたとしても市場を壊すのではなく、不足分を補う方向に働く可能性があると説明しました。
入門編のはずが、熱い議論の場に
今回のセッションは、もともと宇宙ビジネス入門者にもわかりやすい「入門編」として企画されたものでしたが、会場にはさまざまな専門的背景を持つ参加者が集まり、質疑応答ではかなり深い論点まで議論が展開されました。
それでも、若元氏が構想の全体像と現在地を率直に語り、伊藤が入門者目線で整理しながら進行することで、専門性の高い内容でありながらも、参加者がそれぞれのレベルで考えを深められる場になったかと思います。
宇宙資源活用というテーマは、一見すると遠い未来の話に見えるかもしれません。
しかし、そこには「宇宙でどう持続的に活動するか」という、人類の次の段階のインフラ設計に関わる本質的な問いがあります。今回のトークは、その入口を開くセッションだったと言えるでしょう。

今後の挑戦にも注目
最後に若元氏は、「理解されにくいし、本当にできるのかと言われる分野だからこそ、スタートアップとして挑む意味がある」と語りました。
厳しい質問や懐疑的な視点も、事業を磨くための重要なフィードバックとして受け止めている様子が印象的でした。
現在は若元氏が中心となって事業を進めていますが、今後は地上実証から宇宙機設計へとフェーズが進む中で、宇宙機や輸送システムに詳しい人材・パートナーとの連携も重要になっていきそうです。
まとめ
今回のトークセッションでは、「宇宙で資源を現地調達する」という発想を入り口に、小惑星資源というテーマの可能性と難しさの両方が浮き彫りになりました。
小惑星資源の活用には、多くの技術的課題があります。それでも、「宇宙で資源を調達し、宇宙で使う」という考え方は、将来の宇宙インフラを考えるうえで重要な視点の一つと言えるでしょう。
宇宙ビジネスはまだ発展途上の分野ですが、こうした挑戦的な取り組みや議論の積み重ねが、新しい可能性を切り拓いていくのかもしれません。ABLabとしても、今後の動向を引き続き注目していきたいと思います。
カフェバー流れ星について
カフェバー流れ星は、宇宙ビジネスに関心を持つ人が集う交流イベントです。宇宙ビジネスの実践コミュニティ「ABLab」が運営し、宇宙の仲間作りを支援しています。
■タイムテーブル
18:40 開場
19:00 オープニング・交流会
20:00 トークセッション
21:00 再び交流会
22:00 クロージング
■今回のトークセッション
テーマ:宇宙で資源を現地調達する時代へ 〜なぜ小惑星に注目するのか?〜
ゲスト:若元 淳鷹 氏 株式会社オーレオンスペースシステムズ 代表取締役
聞き手:伊藤 真之 一般社団法人ABLab 代表理事
カフェバー流れ星への参加方法
次回以降のカフェバー流れ星に参加したい方は、ABLabのPeatixをフォローしてください。イベント公開時に通知を受け取ることができます。
投稿者プロフィール






