【イベントレポート】人類の宇宙進出に求められるマーケティングとは?!
9月13日、中秋の名月の夜に、「月マーケティング&月面フード」をテーマとしたトークセッションイベントが開催されました。主催はJAXA、宇宙航空マーケティング研究会、Space Food Xです。
そしてABLabの運営協力によって、カフェバー形式でお酒を嗜みながら月を語る熱い夜となりました。イベントの様子をレポートします。
書籍「月をマーケティングする」の概要紹介
宇宙航空マーケティング研究会リーダーである湊宣明先生より、書籍「月をマーケティングする」の内容をダイジェストで解説いただきました。
アポロ計画において、どのようにして国民の興味・関心・そして感情移入を宇宙ミッションに向かわせることができたのか。そして、偉業を成し遂げたにも関わらず、なぜ国民の関心は離れていきアポロ時代の終わりへと向かっていったのか。宇宙開発におけるマーケティングの重要性が、この書籍では解説されています。
スライド1枚にまとめた解説が超わかりやすかったです。
【パネルセッション①】アポロ計画から学ぶ、日本が月を目指すために必要なマーケティングとは?
書籍「月をマーケティングする」の内容を踏まえ、日本が月面開発を目指すために必要なマーケティングについて、ディスカッションが行われました。
パネリストは以下のメンバー。豪華です!
- 竹内 靖朗 氏(日経BP『月をマーケティングする』担当編集者)
- 佐藤 将史 氏(一般社団法人SPACETIDE)
- 落合 美佳 氏(JAXA国際宇宙探査センター)
- 荒井 誠 氏 (電通宇宙ラボ/宇宙航空マーケティング研究会)
- 湊 宣明 氏 (立命館大学大学院テクノロジー・マネジメント研究科) ※モデレーター
「アポロ計画の成功、そしてテレビ配信技術が向上していくにも関わらず、国民の心は離れていき終わりを迎えてしまうところに、マーケティングの難しさ、面白さがある」と語る竹内氏。
「いくらパッションがあっても政府ミッションだけでは続かない。皆が自分ごと化するような仕掛けを考えていかないといけない。コミュニティを形成し、様々なディスカッションをすることが大事」と落合氏。
「2010年代後半から、政府も企業も一斉に宇宙に向かい始めた。今後はSDGsを軸に、世界中の宇宙機関、民間企業が、数多くの月面着陸、資源開発、友人滞在のミッションを予定している」と宇宙飛行士姿の佐藤氏。
宇宙マーケティングはスポーツマーケティングと構造が似ている。夢実現のためにイノベーションが起きる。ビジョンや夢を掲げることの重要性を語る荒井氏。
多くの人を巻き込んでいくにあたり、「富士山は登れるから人が集まる。エベレストに登る人はなかなかいない。ちょうど良い難易度の設定が重要」とモデレーターの湊先生。
アポロ計画の事例から、宇宙開発において、マーケティングによって国民の関心や支持を集めることがいかに重要かを知ることができました。そして、そのためには魅力的なビジョンを掲げ続け、インタラクティブに多くの人を巻き込んでいく仕掛けが必要だということを実感しました。
これからは国や大企業だけが宇宙を開拓する時代じゃない。一人一人にできることが見つけられる。多くの人に宇宙ビジネスのチャンスが訪れる時代ですね。
【パネルセッション②】月面×フード×マーケティング~人類は月で何を食べるのか、食が月面ビジネスをリードする?~
続いては、「月面フード」がテーマです。パネリストは以下のメンバー。
- 小正 瑞季 氏(リアルテックファンド/Space Food X代表)
- 増田 拓也 氏(株式会社シグマクシス)
- 浅野 高光 氏(株式会社ワンテーブル/株式会社エムエスディ)
- 榎本 麗美 氏(宇宙ビジネスを応援する宇宙キャスター/星空準案内人)
- 菊池 優太 氏(JAXA新事業促進部/宇宙航空マーケティング研究会)※モデレーター
「2040年に月面で食べたいものは?」とカジュアルな話題で盛り上げるモデレータの菊池氏。
「2040年に月に1000人滞在する未来がやってくる。すると「食」には必ず需要があり、5600億円の市場ができると予測できる」と小正氏。月では何が食べたいかと聞かれ、「ビール。月の地ビールを飲みたい!」
「食は必ず発生するので、必ずお金が落ちる分野。そして、食は楽しむ分野でもある。だから面白い」と増田氏。「月ではやっぱり餅つき!」
「宇宙食って真面目すぎる。僕らが食べてるものってもっとジャンクだよね。人の欲求をくすぐるものを作るべき」と浅野氏。月では、天ぷらを作るとどうなるか検証したいとのこと。
「宇宙というと遠い存在に感じてしまうけど、宇宙食なら多くの人にとって身近に感じられるかもしれない。月でもやっぱり美味しいものが食べたい!」と榎本さん。
「食」という身近なテーマで、カジュアルに楽しく、そして趣深いトークが繰り広げられました。鍵になるのは日本の強みである技術と文化。文化はお金で手に入るものではない。日本の食文化は宇宙でも強みになるかもしれませんね!
ABLabからのお知らせ
「月×マーケティング×食」で盛り上がった本イベントの最後に、ABLabから「Cafe & Bar 流れ星」の紹介、そしてABLabの紹介をさせていただきました。
Cafe & Bar 流れ星の紹介
月に一度だけオープンする、宇宙ビジネスに関心のある人が集まるカフェバーにぜひ遊びに来てくださいと、営業日を告知させていただきました。(おかげさまで、チケットは売れに売れましたw)
宇宙ビジネスのオンラインサロン「ABLab」
そして、宇宙ビジネスのオンラインサロン「ABLab」で今動いているプロジェクトを紹介させていただきました。マンガ制作、ラジオ、ゲーム制作、アパレル、図書館、宇宙医学、宇宙法、宇宙教育、月面探査、R2D2を宇宙に連れて行く、S-Booster2019などなど。
ABLabで動いているプロジェクトの詳細はこちら。
https://ablab.space/lab/projects/
ABLabには今、9月現在で65人の仲間がいて、誰でも宇宙ビジネスのチャンスに向けて行動を始めることができます。行動だけが未来を切り開く。一人の小さな行動からストーリーが動き出す。宇宙の可能性にウズウズしたら、ぜひABLabで一緒に挑戦しましょう。
まとめ
実はこのイベント、最初から最後まで、ドリンクが無料で提供され飲み放題でした。ABLabのカフェバー流れ星が出張営業ということで、会場の端でビール、ハイボール、カクテル、ソフトドリンク等を提供していたのです。
満席の会場、そしてお酒も入り、面白いテーマのトークセッション。参加者の皆様もディスカッションに混ざりたくてウズウズしたのではないでしょうか。懇親会も盛りに盛り上がりました。
ここから生まれた出会いが、新たなプロジェクトに繋がり、僕らの宇宙開発へと発展していけば素敵ですね。アポロから50周年の中秋の名月にふさわしい夜でした。
写真:なかいさん(@kbacana22)
投稿者プロフィール
- 1983年、福島県生まれ。IT業界で約10年マーケティングの経験を積んだ後、ファンブック株式会社を設立し独立。2018年、当時小学1年生の息子と宇宙の勉強を始めたことがきっかけで、宇宙ビジネスの潮流を知り、半年後に宇宙ビジネスコミュニティ「ABLab」を創設。「地球上のすべての業界を、宇宙産業に巻き込む」というビジョンを掲げ、異業種から宇宙に挑戦する人や企業を支援し、事業創出と人材輩出に取り組む。