宇宙ベンチャーの代表たちが語る「宇宙ビジネスの創出・育成に必要なこととは?」
ABLabの伊藤です。2018年3月、内閣府主催宇宙シンポジウムで行われた、日本の宇宙産業の最先端を走る方々によるパネルディスカッションの模様をレポートします。テーマは、「宇宙ビジネスの創出・育成に必要なこととは?」。
人工流れ星に挑戦するALEの岡島氏、宇宙ごみの除去事業を目指すアストロスケールの岡田氏、月面資源開発事業に挑むispaceの袴田氏、いずれも日本を代表する宇宙ベンチャーです。そして、宇宙ビジネスアイデコンテスト「S-Booster 2017」大賞の松本氏、VCのリアルテックファンドの小正氏。モデレーターはSPACETIDE代表の石田氏です。
テーマ:「宇宙ビジネスの創出・育成に必要なこととは?」 <パネリスト> <モデレーター> |
0から1を作る過程で、難しかったことは?
事業の立ち上げ時、0から1を作るような過程で難しかったことを教えてください。
松本氏
どういう情報が欲しいかを明確にしないといけないところがまず難しい。打ち上げコストの回収プランなど、ビジネスプランを描くのが難しい。
袴田氏
2010年のispace立ち上げ当時に思っていたことが3つある。
- お金が必要
- 技術よりもお金
- 新しいことをやろうとするときに受ける批判
とにかくどうすればお金を集められるかが課題だった。技術に関しては大学との連携もあり問題なかった。また、当時はいろいろ批判を受けた。しかし、新しいからこそ批判がある。折れない心が大事。周りの意見を聞くのはいいが、最終的には自分で判断しなければならない。そして、批判を受けるとしても、あえて新しいやり方に挑戦していかなければならない。従来のやり方だけでは勝てないから。
岡島氏
私の場合、お金と技術の順番は逆だった。流れ星を人工的に作るという、誰もやったことのないことをやろうとしているので、本当にできるのかを技術的に証明しないといけない。その上でお金。技術を証明するためにもお金が必要。お金を集めるためには、前例のないことを面白がってくれるような人を味方につけて応援してもらえるかどうかが大事だと思う。そして、折れない心は本当に大事。
- そもそも技術的にできるのか、技術を証明する必要がある。
- お金。技術を証明するためにもお金が必要。
- 折れない心は本当に重要。
岡田氏
宇宙ごみについては、費用の感覚がまずわからなかった。どれくらいのサイズで、どういう方法で、どういう前提であれば、だいたいいくらくらい必要か。そういう費用感がわかるまでに1年以上かかった。
立ち上げ時には、6ヶ月以内に最初の資金調達と、工場と、チームを作ると決めた。工場建設の際には土地を借りる必要があるわけだが、人工衛星を作るというと大抵拒否される。そこで、仲間と相談して、ラジオを作ると言えばいいねという話になった。地主の審査の時期、新聞に弊社の資金調達の記事が出たことで信用につながり、なんとか借りれた。最初の信用を作るというのは大変。
小正氏
こういうステージは誰もが通る道。進みながら考えていくもの。リアルテックファンドでは、0から1を作るときのこのようなモヤっとしたステージの支援もしている。例えば、チーム作りなど。
難しい立ち上げステージをどのように乗り越えたか
袴田氏
月面探査ローバーについては、大学教授の協力を受けながらだったので、技術のバックグラウンドはあった。チップやシステム、ファイナンスなど、複合的に捉えるように意識していた。
岡島氏
アイデアから事業に持っていくまでのアプローチが重要。人工流れ星は、面白がってもらえるアイデアではあるけど、それを見たときにどう感じるか、皆想像できていないと思う。それを具体的に想像してもらえるように取り組んでいる。
松本氏
私が取り組んでいるのは、従来のビジネス課題を宇宙を使ってどう解決するかという取り組み。なので、実現できればニーズは確実にある。あとは、費用対効果がポイント。
岡田氏
費用対効果はとても大事。やはりお客様はデブリ除去を安くしたい。お互いに歩み寄ることが重要で、お客様側でこうしてくれれば安くできますよと議論している。ニーズを徹底して聞き、一緒にソリューションを作っていくことが大事。
当時、市場がないと言われたときには、非常に良い環境だと感じた。それは競合がいないということだから。
ビジネスプランを作るときのキモは?
小正氏
既存市場か新規市場かでアプローチが異なる。リアルテックファンドでは両方支援している。新規の場合、投資家を口説くのはとても難しい。ファーストカスタマーを作ることが大事。誰が買うのか?最初のお客様を捕まえることが最初の一歩。
心が折れそうになった瞬間は?
折れない心が大事というお話がありましたが、心が折れそうになった瞬間を教えてください。
袴田氏
常に折れそう。課題がいっぱい。初めて大きなお金を預かるときが一番苦しかった。本当にコミットできるかという重圧。
岡島氏
毎日のように折れている。毎日大変。どんどん大変になってきている。
岡田氏
私は折れそうになったことはない。ただ、ショックを受けることはある。例えば、ソユーズの打ち上げ失敗はショックだった。私はメンバーのことをとても心配していたが、メンバーは私のことを心配していたらしい。
強いチームとはどんなチーム?
強いチームとはどんなチームなのでしょうか?
小正氏
目標に対して強いパッションを持って一丸となっているかが重要。投資する際には、複数人で想いを共有できるチームになっているかを見ている。
袴田氏
ピンでは何もできない。大きなチームになればなるほど、出入りの回転も出てくるので、一人一人の意思が重要になってくる。
これから宇宙ビジネスに挑戦する方へ
最後に、新しくビジネスを始める方々にメッセージをお願いします。
岡島氏
今後は、日本から宇宙ベンチャーがどんどん出てくることになると思います。一緒に頑張りましょう。
岡田氏
最近は、日々関係者が増えている。共に思いを背負って頑張ろうと思っている。ネガティブなニュースもあるが、それを吹き飛ばすくらい頑張るので、関心を持って見ていてほしい。
袴田氏
プレイヤーを増やして産業を大きくしていくのが我々のミッション。既存企業が宇宙産業に入ってこれるようにしたい。グローバルでリードできるような産業を日本に作って行きたい。
松本氏
私もとにかく頑張りたい。共に頑張りましょう。
小正氏
チームが大事。パッションを表に向けて発信し続けること。そして行動すること。それによって仲間が集まってくる。ぜひ発信し続けてほしい。
投資家の方々に伝えたいこととしては、宇宙産業は今盛り上がってきている分野で、投資家もリターンを得られるようになってきている。ぜひ一緒に盛り上げてもらいたい。
まとめ
以上、内閣府主催宇宙シンポジウムでのパネルディスカッションの内容をお届けしました。日本の宇宙ビジネスのリーダーの皆さんの苦労や熱い想いに、私もとても刺激を受けました。私自身はまだどんな貢献ができるのかわかりませんが、とりあえずこういった形で情報を発信するところから始めて行こうと思います。
必死でメモを取りながら聴き、ディスカッションの内容をまとめたつもりではありますが、私の解釈に誤りがある部分がもしかしたらあるかもしれません。本レポートは、登壇されたご本人たちによる内容確認はしておりませんので、いち参加者によるレポートとして位置付けていただければ幸いです。
内閣府主催宇宙シンポジウムの全体レポートは以下の記事をご覧ください。
http://ablab.space/event/uchuriyo-simposium-2018/
投稿者プロフィール
- 1983年、福島県生まれ。IT業界で約10年マーケティングの経験を積んだ後、ファンブック株式会社を設立し独立。2018年、当時小学1年生の息子と宇宙の勉強を始めたことがきっかけで、宇宙ビジネスの潮流を知り、半年後に宇宙ビジネスコミュニティ「ABLab」を創設。「地球上のすべての業界を、宇宙産業に巻き込む」というビジョンを掲げ、異業種から宇宙に挑戦する人や企業を支援し、事業創出と人材輩出に取り組む。