ABLab宇宙医療プロジェクトの現在―2021年前期―

こんにちは、外科医の後藤です。

前回4月にプロジェクトの活動状況を報告して、はや半年が過ぎました。

現在のプロジェクトでは「人の宇宙生活に必要な、あらゆるものを創る」というビジョンのもと、ますます宇宙へ向けた挑戦が加速しています。

今日はこの半年の活動報告をしたいと思います。

THINK SPACE LIFEでの勉強会主催

7月9日、昨年からプロジェクトで参加しているJAXAのTHINK SPACE LIFEコミュニティで、メンバー企業の方々向けに勉強会を開催する機会を頂きました。

勉強会を企画した理由は、宇宙生活や医療ヘルスケアという分野での市場ニーズをとらえることはいまだ難しく、高い技術やすぐれた製品を持つ多くの企業が新規事業へ向けたアクションを起こしにくい状態なのではないかと考えたためです。

この勉強会ではこれらの要因を取り除くために、テーマを以下の2つとしました。

①宇宙滞在と医療ヘルスケア分野の研究・技術の最先端 NASA/Human Reserach Programの解説を中心に

②医療ヘルスケア製品の宇宙市場への展開・ビジネスモデルについて、海外の先行事例から

1つ目のテーマでは、有人宇宙開発で世界をリードする、NASAのHuman Researh Programという部門の活動内容についてプロジェクトメンバーで詳細な調査を行い、エッセンスを抽出してお伝えしました。

具体的には、米国をはじめ世界の宇宙医学研究や開発の現場では何を重要課題と捉え、どのようなテーマの研究が行われているのか。

そこでは、いかなる企業・大学などのプレイヤーが関与し、どの地点まで技術開発が進んでいるかなどです。

さらに、実際にそこで生み出された製品などの実例も提示しご紹介しました。

Credit:NASA

2つ目のテーマでは、この宇宙生活・医療ヘルスケアという分野の新規事業をビジネスとして成立させるために、「ニーズの保有者(民・官)は誰か」と「現在/10年以内/20年後以降の未来での市場段階別に、いつどんなニーズが生まれるか」という2つの観点でセグメントを区切って解説しました。

今後も、このような宇宙医療の現状とニーズについて分析を重ね、この分野で事業検討されている企業の方々へ提供していきたいと思います。

宇宙市場を目指す、多くの企業様とのやりとり

上記のTHINK SPACE LIFEコミュニティの他にも、我々の活動に関心をもって頂いた企業の皆様と、意見交換を活発に実施しています。

オンラインでのやり取りで、まずは自己紹介とざっくばらんとした雑談から、宇宙という市場に向けてどんな事業を検討されているか。

さらに、その足かせとなっている事項は何かについてお聞きし、そこからそれぞれの企業でお持ちの技術や製品をどう宇宙という市場に展開していくかについてプロジェクトで検討し、アイデアを提案させてもらっています。

当初のアイデア通りでなくても、そこから話が盛り上がってこんな方法もあるね!こんな分野に詳しい人を紹介してもらえないか?など、よい意味でどんどん脱線しながら宇宙という市場に向けたアイデアが定まっていく過程は、とてもわくわくするものです。

市場展開の方法としては、直近の達成を目指すのであればやはり

THINK SPACE LIFEへのISS生活用品公募への提出(第2回実施:2021年9月30日〆切

がお勧めとするところであり、今年はプロジェクトとして宇宙での廃用性筋萎縮の解決を目指す、フィットネス企業様のアイデア作成をご支援しました。

中長期的な研究開発による市場展開を視野に入れている場合は

JAXAの将​来​有​人​宇​宙​活​動​に​向​け​た​宇​宙​医​学​/​健​康​管​理​技​術​開​発​に​か​か​わ​る​意​見​募​集(通年)

などへの提出を支援させてもらっています。

このように、人の生活や医療という新たな分野の宇宙市場に関心のある企業の方と意見交換を行って、戦略を提案するのが自分たちの使命であり、実際の共創事業スタートまであと少しというところまで来ている企業もあります。

これらの具体的な内容については、顧客企業様と共同で今後のプレスリリースや、学会・イベントなどで公開していきたいと考えていますので、お楽しみに。

さらに、我々の活動を広く知ってもらうためにプロジェクトホームページを公開しました。

メンバーは私のほか現役の医療者、宇宙医学に高い関心を持ち活動する医学生をはじめ、医療以外にさまざまな専門性をもつスペシャリストです。

さらに近日、次回の宇宙飛行士選抜を目指す気鋭の外科医師がプロジェクトに加わりました。

このように着実にプロジェクトメンバーが増えてはいるものの、さらに多くの案件に対応するにはまだまだ人手が不足している状況です。

今後はプロジェクトの法人化を行うことも決定していますので、宇宙での医療と産業創出に高い関心と情熱を持つ方にぜひメンバーとして加入してほしいと思います。

もちろん、宇宙市場を目指す企業様から案件のご相談は、いつでもお待ちしています。

2021年度前半の宇宙医療プロジェクトについて報告しました。

投稿者プロフィール

後藤正幸
後藤正幸
「宇宙に、医療を」目標とする脳神経外科医。医療分野での宇宙ビジネス創出を目指して、日々活動中。最新の宇宙医学研究を、多くの人に分かりやすく伝える発信を行なっている。