Meetup in ARK Hills #4「宇宙ビジネスについて考える」に参加してきた
こんにちは、ABLabの棚田です!
2018年9月25日に行われたMeetup in ARK Hills@アーク森ビルに参加してきました。
内容としては、実際に最前線で活躍されているプレイヤー側と投資する側、両者の目線で宇宙ビジネスについて考えるというものでした。
Meetup in ARK Hills #4「宇宙ビジネスについて考える」 | アークヒルズ – ARK Hills
登壇者
石田 真康 氏
一般社団法人SPACETIDE 代表理事
A.T. カーニー株式会社 プリンシパル
木村 亮介 氏
IF Lifetime Ventures co-Founder 兼
インキュベイトファンド アソシエイト
永崎 将利 氏
Space BD株式会社 代表取締役社長
岡島 礼奈 氏
株式会社ALE 代表取締役
宇宙ベンチャーと投資
# 石田さん
はじめにSPACETIDE代表の石田 真康さんから日本の宇宙ビジネスの歴史と現状についてお話がありました。
現在全世界では下記のように宇宙ビジネスの潮流がきています。
・宇宙産業の市場規模は35兆円
・1000社以上の宇宙ベンチャー
・投資総額1.2兆円
・30ヶ国以上が参入
またその市場セグメントは地上・軌道・深宇宙という空間軸で分けると現在大きく6つ。
日本国内でもこの全セグメントに満遍なく、20社程度の宇宙ベンチャーが存在しています。
下記画像は国内の代表的な宇宙ベンチャーの設立年を示したもので、2005年のQPS研究がNewSpaceの始まりとされています。NewSpaceとは、従来の政府主導の宇宙開発組織とは異なり、異業種からの参入やベンチャー企業など民間主導の新興勢力のことです。
ちなみにアメリカでは、ITバブル絶頂期(2000年)に出てきた宇宙ベンチャーが多いそうです。例えばBLUE ORIGINやSPACE Xなどはその典型ですね。政府の予算規模の多額の資金を利益の数%でまかなえるような民間企業発のベンチャーが中心となって宇宙開発を進めてきました。その意味で日本で資金がほぼゼロベースで世界で戦っていくためにはかなり知恵を絞る必要がありそうです。
ただし、日本に今ある20社程度の宇宙ベンチャーは一つ一つがいい意味で尖っており、世界でも割と名前が通じるそうです。その証拠に国内宇宙ベンチャーへ投資する企業の数はアメリカに次いで世界第2位です。さらに面白いのは出資者がいわゆるVCではなく、あまり宇宙に関わってこなかった普通の大手企業が多いという点です。異業種企業が宇宙を通して連携することができればこれは日本の強みに変わるでしょう。
ちなみにこうした宇宙ビジネス系のイベントに数多く登壇されている石田さん情報によると、現在宇宙ビジネスに興味を持ってイベントに出席している方の割合は以下のようになっているそうです。
事業開発関係の方と同じくらいエンジニアや研究者の方がいて、同時に投資家の方がいて、もはや出席者同士でビジネスを起こせる雰囲気はありますよね笑。
# 木村さん
続いて、これまでIncubate FundとしてIT企業や宇宙ベンチャーに投資をしてきた木村さんと、SPACETIDEの石田さんの対談がありました。箇条書き形式でいくつか紹介します。
(1)なぜ宇宙業界に投資しようと思ったのか?
・IT産業への投資で得たお金の新たな投資先を探していた
・ビジョンは途方も無いが、優秀な人が多い、集まっている
・ある種無法地帯なのでビジネスモデルは考えようでいくらでもある
(2)宇宙業界の起業家は以下の3つに分類される(笑)
・宇宙が純粋に好きな人
・既存を破壊できる業界に興味がある人
・人類課題を自分が解決しなければならないと勘違いする?異端者(Elon Musk)
(3)宇宙開発の専門技術などは専門家でないと分からない気もするが、何を基準に投資判断する?
・技術的に可能であることを論文や研究データを元にすぐに根拠を明示できるか
・人を集め、投資した分しっかりプロジェクトを推進できる力があるか
・人柄
(4)ispace社は桁違いの資金(101.5億円)を調達したがその理由は?
・誰もやってなくて一見突拍子もないけど技術的に可能であること
・多くの人々に応援されやすいこと(月探査という夢のあるミッション)
・宇宙ビジネスの最初の広告塔になり得ること(故に今後同じ金額を投資することは難しい)
ちなみに感覚的にはITベンチャーと宇宙ベンチャーへの投資額は基本1桁違うらしいです。
株式会社Space BD
実際に宇宙ビジネスの第一線で働いているSpace BD代表の永崎 将利さんからプレゼンテーションがありました。永崎さんは元々は三井物産で働いており、その経験を活かし、日本で初めての宇宙商社であるSpace BDを2017年に立ち上げました。
Space BDといえば2018年5月に、JAXAの「きぼう」からの超小型衛星放出サービスの事業者に選定されたことはまだ耳に新しいですよね。
一応説明しておくと、JAXAでは「きぼう利用戦略」(平成29年8月第2版制定)に基づき、ISSの「きぼう」の利用事業について、民間等による事業自立化(民間への開放)を目指しており、今回、その第一弾として、超小型衛星放出事業の事業者として、Space BDと三井物産の2社を選定しています。
ここで、「あれ、永崎さんは元々三井物産だから、協力しているのかな….?」とか思ったりしていたのですが、実は協力体制ではなくむしろ競合関係だったそうです笑。
Space BDとは
さて、そんなSpace BDが担う役割と背景は、以下のようになっています。
背景:
「衛星データ活用や通信にはじまり、宇宙旅行、資源開発、移住と、可能性が広がる宇宙ですが、その第一歩は、宇宙へのアクセス」
↓
解決:
「私たちはまずこの領域において、ロケットと小型・超小型衛星のマッチング機能に加え、打上げに関わるインターフェース調整、安全審査、輸出入、契約といった必要業務のアウトソーシング機能を備えた一貫型打上げサービス(ISS衛星放出含む)を提供。」
↓
「ロケット・衛星事業者の負荷を軽減し、開発に特化できる環境づくりに貢献してまいります。」
つまり今後増えるであろう小型衛星の需要に対して打ち上げ時の手間、コスト、時間の煩わしさを解消するというものです。
衛星打ち上げ手段は以下の3つがありますが、Space BDが目指すのはまずはISSからの放出だそうです:
・ロケット相乗り
・ISS(きぼう)からの放出
・小型ロケット
宇宙業界は食い合うパイがそもそも小さい!
永崎さんの言葉で印象的だったのが、そもそも細いピザを取り合う前に、みんなで協力してまずはピザを大きくする必要があるよね、というものです。
自分は他社とここが違う、こんな優れた技術をもっている、というのももちろん大事ですが、まずは一歩俯瞰して業界全体を見渡し、共通の根本課題を解決することが求められているのかもしれません。
株式会社ALE
続いて、ALE代表の岡島 礼奈さんからプレゼンテーションがありました。
余談ですが、ALEの岡島さんを始め、SPACETIDEの石田さん、ispaceの袴田さん、アクセルスペースの中村さんは全員1979年生まれだそうで、宇宙ビジネスを牽引している方が同じ年生まれというのはなにやら非常に縁がありますね〜。
ALEとは
ALEは2011年に設立した、世界初の人工流れ星事業「Sky Canvas」を行う企業です。
一見エンタメサービス重視のように見えますが、実は科学的意義も大きく、4大学と学術的な連携を取っています。岡島さんは、民間がサイエンスを盛り上げていける未来を目標にしているとのこと。
Sky Canvas
(1)エンターテイメント
「特殊な素材の粒を軌道上の人工衛星から宇宙空間に放出して大気圏に突入させることで、流れ星を人工的に再現することを目指しています。粒が大気圏で燃焼する様子は地上からは流れ星のように見え、その輝きは最大で200km圏内で同時に楽しむことができきます。」
(2)科学の発展
「自然界の隕石や流れ星のメカニズムを解明。」
「高層大気の挙動を観測することで、物理学の発展に寄与。」
「人工物を、大気圏に突入させて安全に廃棄する際の予測に用いるデータを収集。」
世界初の技術
秒速8kmという猛スピードで地球を回る人工衛星から、地球上の狙った場所に正確に流れ星を流すためには大気との相互作用計算や流星源の速度制御など、とても高度な技術を要します。ALEでは日本ならではの精密な技術を駆使し、放出精度を誤差約0.3%まで高めることに成功しているそうです。
スケジュール
現在、既に2号機を開発中で、1号機はJAXAの革新的衛星技術実証プログラムの候補に選定されています。うまくいけば2018年度中にイプシロンロケットによって打ち上げられるそうです。
ただし、このイプシロンロケットによって投入される軌道高度は500kmなのですが、国際的にISSの高度(400km)より上空では実験しないでくれとお願いされたようで、約1.5年ほどかけて高度を400km以下まで下げ、実際に実証されるのは2020年とのこと。
https://shootingstarchallenge.com/
Official Partnerは、JALとファミリーマート。実施場所は瀬戸内海周辺(晴れが多い)だそう。
まとめ
民間の宇宙ビジネス交流の場作りの第一人者である石田さん、宇宙ベンチャーに対して大規模な投資経験のある木村さん、プレイヤーとして最前線で活躍されている永崎さんと岡島さん、こうして並べてみるととてつもなく豪華な面々が集ったカンファレンスでした。
どの立場から見ても、宇宙ビジネスの参入障壁はやはり相当高いそうで、これまで閉じた産業であったが故に、技術・人材の調達に苦労しているようでした。
また現状民間できちんとサイクルを回して利益を継続的に出せている企業はほぼいないという事実を見ても、投資を得るための事業計画書を書くのは相当大変らしいです。ファイナンス面での体力がある程度ないと厳しいという現実もあるようです。
ただ、永崎さんいわく、どんな小さなアイディアでもリスクを恐れてやらないのではなく、今は少しでも可能性のあるタネはできるだけ撒いて、とりあえずサイクルを回してみることが大切とのこと。
ABLabはまさにこの課題を解決すべく、
・民間中心でオープンな場
・利益が出ずとも持続可能な仕組み
・非宇宙産業含めた幅広い層の巻き込み
を特徴として立ち上げたオンラインサロンであり、宇宙ビジネスへの挑戦者人口が増えるような環境を提供していきます!!
投稿者プロフィール
- ABLab創設者の一人。大学院時代は大質量ブラックホールについて研究。 現在はリモートセンシングに関する仕事に従事。日本の民間宇宙産業発展に貢献したいと思い、ABLabに。S-Booster 2019にてJAXA賞を受賞し、小型衛星試験場のシェアリングサービス「SEESE」の事業化に向けて鋭意活動中!