【開催レポート】ABLab定例会 SAR衛星編(10/10)

10月10日のABLab定例会は、株式会社オルカプロダクション 社長の北沢至さんをお招きし、電波で地球を観測する「SAR衛星」をテーマに開催しました。はじめにSAR衛星について北沢さんから学び、それを踏まえてグループディスカッションを行いました。

開催概要はこちらの記事を参照ください。

【告知】ABLab定例会 「SAR衛星の概要と利活用検討グループワーク」(10/10)

SAR衛星の概要

株式会社オルカプロダクション 代表取締役社長 北沢 至 氏

株式会社オルカプロダクション 代表取締役社長 北沢 至 氏

株式会社オルカプロダクションはモーションセンサーやARなどを含む幅広いアプリケーション開発やリッチメディア制作を手がける企業で、その一つとしてSAR衛星の教育アプリも公開しています。今回は社長の北沢至さんを講師に迎え、リモートセンシング、SAR衛星についてレクチャーいただきました。

学んだことは大きく分けて3パートあります。非常に内容の濃いレクチャーで実りの多いものになりました。

(1)合成開口レーダー(SAR)とは?
(2)SARの応用分野
(3)SARデータを使ってみる

(1)合成開口レーダー(SAR)とは?

SAR衛星の概要と特徴

SAR衛星とは地表に向かって電波を照射し、衛星に戻ってきた電波の「強度」と戻ってくるまでの「時間」を測定し、分析することで地表の様子を知ることができるセンサーを搭載した衛星です。

光の反射を捉え、写真のようなデータを得ることが出来る光学センサーとは違い、SARには太陽の光が無い夜でも、雲があっても邪魔されずに観測できるという特徴があります。

(2)SARの応用分野

SARは天候に影響されず、また昼夜問わず地球の様々な場所を観測することができ、干渉解析を行う事で地盤の変化を知ることができるという特徴から様々な分野に応用されています。安全保障から自然災害対策、巨大構造物や、道路・橋などのインフラ監視などが代表例です。

工場や石油プラントのような大きな施設の管理や、海洋分野、資源探査などビジネス分野での応用がますます期待されています。

(3)SARデータを使ってみる

衛星データの入手先と解析ソフトウェアの例

衛星データは様々な組織が提供しており、有償と無償のものがあります。衛星データ利用促進プラットフォームのように有償のものから、Alaska Satellite Facilityのように研究利用であれば無償のものもあります。

SARデータの解析ソフトウェアはESA (ESA:Europe Space Agency)のSNAPHarris社のENVI/IDL + SARScapeなどがあります。

 

グループディスカッション

SAR衛星で出来ることを把握した後、SAR衛星を用いた新規サービスを下記の2本のテーマで考えました。

  1. 社会課題編
  2. 個人利用編

前述のSAR衛星の特徴を考慮した上でアイデアを出しました。

1本目は社会課題解決にSAR衛星がどんな風に役立つか考え、それがビジネスとして成り立つようお金の流れや顧客について議論しました。「SAR衛星を使い、国立動物園の植生などの環境を監視し動物保護に役立てる」など面白いアイデアが出ました。

2本目は、うって変わって一気に社会から個人に目線を落としてSAR衛星を使った個人向けのサービスについて議論しました。「登山や森林浴に行く人に向けた森や山の状況をSAR衛星データから届けるサービス」などのアイデアが出ました。

 

まとめ

北沢さんとABLabメンバーで記念撮影

今回は「SAR衛星」をテーマに基礎を学び、ディスカッションを通してビジネスアイデアを検討しました。衛星データ活用はこれからどんどん進んでいくでしょう。ABLabにも衛星データ解析を自主的に学んでいるメンバーがいます。しかし今回改めて感じたのは、衛星データだけでビジネスを成り立たせるのは難しいということです。地上データや他の様々なデータ、技術とかけ合わさって初めて衛星データはその価値を発揮するのです。

つまり、宇宙とは全く関係のない分野にいる人こそチャンスがあります。我々と一緒に、衛星データの活用を考えてみませんか?

 

投稿者プロフィール

喜田 圭伍
喜田 圭伍副代表
国際基督教大学(ICU)3年の学生。2年時に世界最大級のソーシャルビジネスコンテストHult Prizeの学内予選を主催する団体を設立。サポートしたチームが日本ベスト6に選ばれ、ドバイ、メキシコで行われた国際大会にも出場。また東大HAITにて機械学習、データサイエンスについて学んでいる。宇宙とソーシャルビジネスに興味がある。