【カフェバー流れ星】2人のマーケターが語る「宇宙ビジネスのマーケティング」

カフェバー流れ星-髙橋亮太さん

 2023年4月19日に開催された宇宙ビジネスの交流イベント「カフェバー流れ星」にて株式会社ワープスペースのCMO 高橋亮太さんをゲストスピーカーとして「宇宙ビジネスのマーケティング」をテーマにトークセッションを行いました。

 ゲーム業界から宇宙産業へ転職という新たな挑戦をした高橋さん。ワープスペースでは大人気マンガ「宇宙兄弟」とのコラボレーションを展開したり、海外の展示会などへも積極的に参加をしていますが、果たしてその道のりはどんなものだったのか。これまでのキャリアや経験などを伺いつつ、高橋さんの興味を仕事に変える秘訣に迫りました。

ダイジェスト版ショート動画(約1分)

まずはダイジェスト版のショート動画をご覧ください。

異業種から挑む宇宙業界

ゲーム業界から宇宙業界へ。きっかけは<☝️リーチ>

 宇宙業界とはかけ離れたゲーム業界から参画。13年間オンラインゲーム業界に従事し、運営の店長を勤めていました。その中で「週次で販売されるオンラインゲームをどう売るか」という課題にどう広告や宣伝を展開するかについて1、から10まで取り組みました。またその会社は海外にどんどん進出したいという意思を持っており、東南アジア、ヨーロッパ、アメリカなどさまざまな地域で活動をしました。その後、子会社を立ち上げて人材を採用し、ビジネスインの戦略を立ていく中で、上手くサービスインすることもあれば、潰してしまうこともありました。その後、グロービス経営大学で経営戦略とマーケティングの講義を受け、当時の会社にマーケティング部署が無かったため「マーケティング部署を作った方が良いのでは?」と社長に直談判し、立ち上げからスタート。マーケターとしてはかなり濃い目のキャリアを歩ませてもらいました。

 しかし「ゲーム業界でやることができなくなってきた」と感じた頃に、新しい挑戦をしたいと思い転職活動を開始しました。そんなとき、転職サイト<ビズリーチ>から宇宙業界のスカウトメールが届きました。「衛星から光通信などやってみませんか?」という内容で、宇宙にビジネスがあることも知らなかった私は宇宙業界の存在を知り、転職することができました。SpaceX社のファルコン9の離着陸や、前澤友作氏の宇宙への挑戦など、そもそも宇宙に興味があったので「なにかこれは運命なのかな」と思い、ワープスペース社へ転職を決意しました。

ワープスペースでは、どんなお仕事を?

 ワープスペースでは、光通信を用いたデータ中継のネットワークを作ろうとしています。

 例えば、携帯電話を持っていてそのデータを無線でパソコンに転送したい場合、恐らくbluetoothなどで接続してから送信すると思います。しかし、携帯電話が非常に離れた位置にある場合、データを送信できなくなる可能性があります。仮に携帯電話が地球の外の人工衛星にある場合、通信は確実にできると思われます。しかし人工衛星の場合、通信できる時間帯が非常に限られており、常に通信が可能なわけではありませんし、データ受信に時間がかかります。そのため、私たちワープスペースは携帯電話とパソコンの間に人工衛星を置いてデータ中継する通信ネットワークを構築し、宇宙との通信を速くすることを目指しています。

 それらを成功させるメリットは、宇宙ステーションで実験した膨大な研究データの収集や送受信がかなりスムーズにできたり、月の開発と探査がさらに進んだ際、有人になった場合のリスクの予防や対策も考慮して、安全に任務を実行するかどうかを検討する際に必要になると思います。

 マーケターとしては新しい業界を切り開くビジネスは非常に面白い反面、大変で難しいことも多いです。以前のゲーム業界では、お客様やユーザーに自分たちのゲームを知ってもらうための広報活動やマーケティングに取り組んでいました。新たに宇宙業界に移ってきた時は、まずワープスペースがベンチャーだということを訴求しなければなりません。資金調達も必要ですし、民間の地球観測衛星事業者や政府や行政の方々にも知っていただく必要があります。また、世界全体の宇宙産業規模は40兆円ほどありますが、日本だけですと1.2兆円(現時点)。日本だけでの活動で考えると、まだまだビジネスとしては難しいと考えられるので、海外市場にも展開する必要があるので、仕事の範囲が広い分やり甲斐もあります。

 いきなりグローバルから始めるベンチャーなので実際、人手をかけられないことや回らないこともしばしば。それでも何とかしなければならないので、たくさん工夫しています。ワープスペースは通信インフラ業なので、電磁波の種類についても、さまざまなステークホルダーの方々に興味や理解を持っていただくということが、ビジネスの根幹であり現在取り組んでいる課題です。

宇宙ビジネスでのマーケティング施策

 ワープスペースでは宇宙兄弟とのコラボレーションなどを含め、海外進出にも積極的に取り組んでいます。「事業開発部」はマーケティングとセールス、コーポレートが含まれています。そのため、セールスにはワープスペースのことをどこで知ってもらったか、というヒアリングをしっかりとしてもらっています。そのフィードバックを元に「これは上手くいったので、これからも続けていく」「これはこういう風に工夫すればもっと良くなるかもしれない」ということを、片っ端からやってみるという試行錯誤を続けています。

 同じ職種とはいえ別の業界なので、全てすんなり仕事ができたかと言われれば決してそうではないです。できた部分では、どうやって広めるかというチャネルについては分かっているので、情報を広げることはできました。けれども、うまくいかなかった部分については、技術情報はエンジニアの方々にいろいろ説明して頂きますが、私自身は全く知らないので「そうなんですね」としか返せません。例えば「<1500マイクロメートルの周波数>を使うんですよ」と言われても、それはどういう周波数なのか見当がつかない。あとは会社の中でネタを掘り起こさないと、なかなか会社の真価というのはうまく伝えられません。エンジニアの方から飲み会で聞いた話だけれど「これはネタになるかな、どうかな?」という判断が難しい。勉強もたくさんしなければなりませんが、どういう風に話せばいいかというのも重要なところです。(ステークホルダーに対して)ワープスペースをもっとよく知ってもらう為に、どういうことをしていて、どういう真価を発揮して、どうお客様の役に立てるかなどを知って頂く為に「その情報は、どう活用できるか?」ということをストレートに訊きます。そういったコミュニケーションを増やし、情報を掘り起こしていく活動は、人間関係や信頼関係築いていくことが重要で、なかなか難しいところだと思います。けれど、やり甲斐はあります。

宇宙業界で働いて、実際いかがでしたか?

 宇宙業界、とりわけスタートアップに関しては非常に人材が不足しています。私が一つのベンチマークになるか分かりませんが『*宙畑(そらばたけ)』を最初から最新まで全部読めば、歴史の中で宇宙ビジネスの成り立ちや、どういった企業がどういうことをしているかっていうのが分かってきます。うまく一般の方々にも伝わるように編集してくださっているので、技術の勘所というのが掴めました。宇宙業界は広く、できることも無限にあります。こんなこともできる、あんなこともできる、逆にこんなことができないんだということが宇宙業界にはたくさんあり、今までの経験が活かされる場面もたくさんあります。(*「宇宙がわかる」情報サイト)

 これからは地球と宇宙で起こっているの線引きがなくなってくると思います。通信インフラが繋がることでその違いは少なくなっていくと考えられます。地球上で得た経験は宇宙でも役立つことが多くなり、副業や複業として、少しずつ企業や業界に関わることは歓迎されることだと思います。

 私も以前に海外で子会社を立ち上げた経験は実際活かされていますし、現地で採用された方々とどうコミュニケーションを取っていくかということも対応しています。最も問題になるのはやはり時間と距離。日本を中心に行われることが多いため、遠ざかっているという意識を持たれ、前職ではかなり苦い思いを何度も経験しました。このような問題も最終的には、人同士の繋がりが重要であることは間違いありません。特に宇宙産業において、どのようなビジネスが可能かということはまだ見えていない部分も多いですが、それを宇宙産業の関係者たちだけで考えることは難しい。いろんな業界の方達と交流して、新しい技術を使った面白いことを繰り広げることができたり、こういった雑談から何かが生まれるような機会を設けることが大切だと考えています。

これからどんな活動をされますか?

 ワープスペースは通信インフラを構築する会社なので、宇宙で活躍する・したい人材をバックアップするような勉強会も開催しており、将来の仲間を見つける活動もしています。このような人々が出てこなければ、宇宙業界全体が羽を広げることはできないでしょう。今後の個人的な展望としては、宇宙一のマーケターになること。もう少し具体的に言うと、まずワープスペースのビジネスを軌道に乗せる必要があります。マーケティングとは製品だけでなく会社や事業に関することなので、5年-10年で右肩上がりに成長させて行きたいです。そしてインフラ整備をする会社なので、その先に生まれるビジネスや人々との交流を育んでいきたいと考えています。

全編を動画でもご視聴いただけます

カフェバー流れ星とは

 カフェバー流れ星は、月に一度だけ開く、宇宙または宇宙ビジネスに関心を持つ人が集うカフェバー。と言っても実店舗があるわけではなく、イベントスペースを借りて一晩限りの交流の場を提供する交流イベントです。

宇宙ビジネスの実践コミュニティ「ABLab」が運営し、宇宙の仲間作りを支援しています。宇宙や宇宙ビジネスに関心のある方ならどなたでもご参加いただけます。ABLabのスタッフがホストとして、ゲストの皆様の新しい出会いや交流をお手伝いしています。これまでも様々なプロジェクトやコラボレーションのきっかけを促してきました。

4月19日開催のイベント概要

日時  :2023年4月19日(水) 19:00-22:00

場所  :New民家バー後楽園店
     ( https://www.instabase.jp/space/4748208721?catalog=true )

参加費 :初めて参加の方    2,000円
     2回目以降の参加の方 3,000円
     ※ABLab会員は月額会費に含まれるため無料

定員  :30名

対象者 :宇宙や宇宙ビジネスに関心のある方

サービス:飲み放題、お菓子おつまみ類

タイムテーブル:

19:00-20:00 オープン、フリータイム
20:00-20:30 自己紹介タイム (参加者の皆さん一人一人に自己紹介をしていただきます)
20:30-21:00 対談セッション
21:00-22:00 フリータイム
22:00-22:30 記念撮影、クロージング

対談ゲスト:

株式会社ワープスペース CMO 高橋亮太さん

カフェバー流れ星への参加方法

 次回以降のカフェバー流れ星に参加したい方は、ABLabのPeatixをフォローしてください。イベント公開時に通知を受け取ることができます。

関連ページ

株式会社ワープスペース
https://warpspace.jp/

投稿者プロフィール

九十九凛
九十九凛宣伝 / 企画
宣伝やブランディングといったコミュニケーションのマネージャー。
フリーランスでSNSディレクションや、広報に必要なデザイン制作と写真撮影をしている。Web3産業ではゲームクリエイターのコミュニティマネージャーとして従事。人やサービスの価値を説明するのが趣味。夢は日本や世界を旅して自然や文化の美しさを撮影しつつ、友だちを見つけに行くこと。