「ARESプロジェクト」が日本初のURC決勝進出へ

ABLab会員が立ち上げ、そしてABLabで継続的に支援させていただいている「ARESプロジェクト」。そこで開発された火星ローバーが、今年6月にアメリカで行われる世界最高峰の学生火星探査ローバーコンテストUniversity Rover Challenge(URC)の世界大会に日本のチームとして初めて決勝進出を果たしました。大変素晴らしい快挙に、今回はARESプロジェクトのリーダー阿依ダニシさんにインタビューをしプロジェクト発足の経緯や決勝に対する思いを伺いました。記事後半には決勝進出に向けて立ち上げたクラウドファンディングの情報も掲載しておりますので是非応援をよろしくお願いいたします。

ARESプロジェクトについて

ARESプロジェクトは、「世界レベルの火星ローバーを日本から」というビジョンを掲げ、日本初のURC出場を目指し発足した学生団体です。東北大学大学院で月面拠点を作るロボットの研究を行う阿依ダニシさんを代表として、慶應義塾大学の永原陵司さん、東北大学の長岡佳汰さんらを中心として2022年2月に結成されました。2024年4月現在、慶應義塾大学、東北大学,東京大学,筑波大学の学生約40名が所属し、東京(慶應大学)と東北(東北大学)の2拠点で分担して火星ローバーの研究開発を進めています。

・ARESプロジェクト公式Webサイト
https://www.arespjt.jp/

・ARESプロジェクトのX
https://twitter.com/AresPjt2022

University Rover Challenge(URC)について

URCは大学生を対象とした世界最高峰のロボット工学コンテストです。毎年6月に米国ユタ州南部の砂漠で開催され、出場チームは次世代の火星ローバーを設計・開発し、その性能を競います。毎年12月および3月に予選審査が行われ、選ばれた36チームが6月の本戦に出場することができます。これまで日本チームが本戦に出場できた実績はありませんでした。

URC公式Webサイト
https://urc.marssociety.org/

URC予選審査プロモーション映像

決勝進出の決め手となったプロモーション映像。国際大会ならではの英語でのナレーションも仕上がりも本当に素晴らしいです。

インタビュー

今回は、プロジェクトのリーダーである阿依ダニシさんを中心にインタビューさせていただき、メンバーにもダニシさんの魅力についてお伺いしました。

azusa

この度は決勝進出、おめでとうございます!この記事を読んだ方が「ARESプロジェクト」について理解していただくために、色々質問させていただきますね。まずプロジェクト立ち上げの経緯について教えていただけますか?

ダニシ

「ARESプロジェクト」は私と永原さん、長岡さんの3名により発足しました。私たちは2022年の冬に参加した東大でのものづくりプログラム「100Program」で出会いました。2か月程度の期間で新しい開発のアイディアを形にするというハッカソンで、ほとんど宇宙関連の立案者がいない中、私が「火星探査」を提案し興味を持って集まったのが永原さん、長岡さんでした。初対面でしたが、議論していく中で私が元々知っていた世界大会URCを目指すというところで意気投合しました。それからこのプロジェクトが始まりました。

azusa

奇跡の出会いですね。今なら出会うべくして出会った様にも思えます。「ARES プロジェクト」と名付けたのは何故でしょうか?

ダニシ

「ARES プロジェクト」は私が大好きな映画「オデッセイ」に出てきた火星ミッション「ARES計画」から取っています。また、ギリシャ神話における火星の戦いの神が「ARES」です。世界大会の猛者が集まる場所へ挑戦していく好戦的な姿勢がイメージに合っていると思いチーム名にしました。

azusa

それはイメージにピッタリですね!では、ダニシさんはなぜ宇宙の中でも、火星を目指したのでしょうか?

ダニシ

私の将来の夢はロボットエンジニアとして宇宙飛行士になることです。宇宙探査は地球上の海底探査や南極観測とは異なり、全く違う惑星・全く違う衛星など、太陽系の歴史や地球とは違う歴史のようにスケールの大きさ全く予想できない面白さがあると考えています。中でもまだ人が到達したことがなく、生命が存在していた可能性が高く、今後注目されていく火星に大変興味を持ちました。また、NASAのミッションにおけるローバーや火星ヘリを受け、エンジニアとしてもとても魅力を感じました。これが火星を目指す理由です。

azusa

今回の大会に向けてどれくらいの期間をかけて、どのような準備をしてこられたのでしょうか?

ダニシ

大会に向けて2年間準備してきました。まずは3人からメンバーを増やすこと。今では40人近くです。次にもちろんローバー開発、大会向けの機体を加えて、今まで7機作ってきました。現在は最新の7号機です。最後にスポンサー・支援集めですね。プロジェクトには資金が必要なので支援者集めに奔走しました。

azusa

確かに、資金集めというのは大変ですよね。ではローバーの開発において最も難しかった点は何でしたか?

ダニシ

予想を遥かに超えていろんな要素を詰め込まないと行けない点ですね。それぞれのコンポーネントを見るとまだ戦えるのでは?と錯覚しますがオーバーオールで見るとものすごく難しいものになります。単体のタイヤやステアリングは大丈夫でも全部組み込むと歪んでしまう様に、ローバー全体としてのシステムにするのがすごく難しかったです。

azusa

予選に提出したプロモーション動画を拝見しました。素晴らしい出来ですね!どういうところを意識されたのでしょう。

ダニシ

ありがとうございます。これまでの経験とローバー大会の他チームのローバー動画を参考にしました。意識したのは的確に技術力を示しつつかっこよさとして一貫性を持つことですね。

azusa

決勝に進むという連絡を受けたときの気持ちを教えてください。

ダニシ

とにかく嬉しかったですし良かったという気持ちが大きかったです。それはもしこの大会に落選したらメンバーのモチベーション維持が難しいと感じていたので。そして残れたのは僕ではなく優秀なメンバーのおかげだと思います。

azusa

大会の競争相手については情報やイメージをお持ちですか?

ダニシ

とにかく強豪が多いと思います。ローバー、人、経験、予算、使ってる部品、すべてで秀でていると思います。多くのチームについてサーベイしましたし、ERCの大会視察で雰囲気は掴んでいます。

azusa

ずばり、大会の目標をお聞かせください

ダニシ

日本初出場チームとして、実力を示すことです。私たちがこれまで開発してきて今の技術力でトップ3とか優勝とか目指すほどすごい成長しているとは考えていません。ただ初出場国としてまぁこの程度でしょと軽くみられている可能性はあります。ですので我々はTOP10に食い込むことを目指して、実力を示し次はてっぺんを取りに行くから覚悟しとくように釘を刺してきます!

azusa

いや~かっこいいですね!ダニシさんから見たメンバーはどんな方々でしょうか?改めてメンバーに伝えたいことはありますか?

ダニシ

とにかく皆が優秀で最強のメンバーが集まっていると思いますし、ここまで来れたのは紛れもなく皆のおかげです。ただ大学生である以上、周りからは「大会より集中することがある」「そんなことより、やるべきことをしなさい」と言われたり、日本初出場の快挙であるのに、試験期間の特別処置を受けられない等、チャレンジしづらい傾向にあると思います。ただし、私たちは新たな挑戦の途中であり、それが将来に必ず繋がると信じています。皆が自信をもって大会に臨み、自信を持って挑戦を語り、将来に繋げてほしいです。

azusa

ありがとうございます。それでは最後に、プロジェクトを支えてくれている支援者の皆様ににメッセージをお願いします。

ダニシ

皆様のご支援のおかげでここまで成長することができました、本当に感謝しております。私たちは今後、世界大会はもちろん真に宇宙開発につながる取り組みをしたいと考えています。私たちのプロジェクトに興味を持った方がいらしたら、いつでもご連絡ください。引き続きよろしくお願いします。

azusa

ダニシさん、ありがとうございました。
では、メンバーの皆さんから見たダニシさんという人柄を教えてもらえますか?

メンバー

自身の夢、目標に向かって行動している人・猪突猛進を物理モデル化した人

メンバー

宇宙開発における力がある。ありすぎてダニシさんの締めたネジは2度と外せない

メンバー

誰とでも仲良く話せる陽気な性格であると共に、夢・目標に対するとてつもない熱意・行動力を兼ね備えてる。その行動力を見て、メンバーは皆自然と彼に惹かれ、パワーをもらい、頑張れています。

azusa

私もダニシさんの印象は、明るく気さくでいて、強い意志を感じる、とても魅力がある人です。このまま是非夢をつかんで宇宙へ火星へ飛び出して行ってほしいです。皆様ありがとうございました。大会の結果報告を楽しみにしています。

まとめ

日本初の決勝進出の快挙を成し遂げたARESプロジェクトのメンバーは皆エネルギーに満ち溢れていてとても輝いています。先日ABLabで出展した展示会では、来場されたお客様にプロジェクトやローバーの説明をすごく楽しそうにしているのが印象的でした。一人一人が使命感を持って活動していて、これからの宇宙開発には彼らのような人材がどんどん活躍の場を広げてくるのかと思うとワクワクします。まずは本戦での活躍が楽しみですね。ABLabはこれからもARESプロジェクトを支援していきます。

クラウドファンディング

「ARESプロジェクト」では6月4日まで大会へ向けたクラウドファンディングをREADY FORで募集しています。日本初のチャレンジを是非皆さんで応援しませんか?詳しくは下記のリンクからご確認ください。
・READY FOR クラウドファンディング
https://readyfor.jp/projects/ares_project?sns_share_token=375d04d719b7ae48b085

お知らせ

決勝進出決定後、嬉しいお知らせが届きました。ABLab法人会員でもあり、アウトドアブランド「CHUMS」として有名な株式会社ランドウェル様がARESプロジェクトのスポンサーに。CHUMSはアメリカ・ユタ州発のブランドで、なんと今回のURCの決勝戦の開催地と同じなのです。この出会いも必然のような気がしてきますね。


・株式会社ランドウェル 
https://www.chums.jp/

https://twitter.com/AresPjt2022/status/1787299309433782515

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