THINK SPACE LIFEへの道のり ~Vol.1 序章~
こんにちは、外科医の後藤です。
今日はいつもと違い、宇宙医学のおはなしではありません。
2020年7月7日にJAXAよりリリースされた、THINK SPACE LIFE―宇宙生活の課題から宇宙と地上双方の暮らしをより良くするビジネス共創プラットフォーム―に、僕たちABLab宇宙医療プロジェクトは総力をあげて挑戦しました。
挑戦への最初の盛り上がりから、厳しい現実を突きつけられ何度も希望を失いかけては這い上がり、ついにアイデア完成に至るまで…この2か月間の夏の戦いは、涙なくしては語れません。
今回は、そのすべてを明らかにしようと思います。
そもそものはじまりは
そもそも、僕たちABLab宇宙医療プロジェクトが始動したのは、今から1年前の2019年9月です。
世を席捲し始めた宇宙産業に憧れつつも、関わる方法がないとあきらめごく普通の臨床医をしていた自分が、ABLabという新たな宇宙ビジネスを目指す集団の存在を知り、カフェバー流れ星に飛び込んだのがその年の6月でした。
そこで出会ったのは、ほとんどが宇宙と直接関わりはない社会人の方々でしたが、宇宙を語る眼差しは皆子どものようにきらきらしていて、あまりに魅力的な場所でした。
ここなら自分も今やるべき仕事を続けながら、宇宙と関われるかもしれない!と考え、迷うことなくそのまま入会を決めたのでした。
さて、夢中で飛び込んだもののそこで自分ができることはいったい何か。
自分の唯一のスキルは約10年間の医療経験ですが、当時は恥ずかしながら宇宙医学というものが何なのかまったく知りません。
しかし、これから当たり前のように宇宙に人が行く時代になるという。人がいるなら、そこには医療が必要なはずだ!
と、きわめて単純な発想で宇宙医学の勉強をはじめ、ネットで得られる情報をかき集めて何とか頭を整理し、2019年9月にはじめての「医療×宇宙プロジェクトミーティング」の開催にこぎつけました。
当時呼びかけに集まってくれたのは6人、本当に基本的な宇宙医学の解説をするだけの内容でしたが、それでも話を皆さん熱心に聞いてくれて本当にうれしかったです。
これをきっかけに、さらにABLab代表の伊藤さんから宇宙医学のブログを書いてみたら?とアドバイスを頂きます。
医療をベースに宇宙ビジネスに関わりたい、でも前例がなさすぎて何をやったらいいかわからない。
だったらまずは情報発信からはじめてみなよ、ということでした。
たしかに、自分で本を読んでインプットするだけより、拙い内容でもアウトプットを目指そうとすれば、はるかに必死に勉強するし記憶にも定着します。
そしてこのブログ連載がスタートし、最低でも月1本は出す!とノルマを決めて、仕事のかたわらひいひい言いながら必死に情報を集めて取り組んできました。
とにかく多くの人に分かりやすく、かつ最先端の研究内容をしっかり調べて伝えるように心がけ、ありがたいことに少しずつ読んで頂ける方も増えてきました。
平行して、およそ月1回の「プロジェクトミーティング」も行ってきました。
基本は宇宙医学の解説ですが、いつも同じ内容では参加してくれる皆さんに悪いので、解説テーマを毎回変えたり最新の海外文献を紹介したり、という風にあれこれ工夫しました。
また、医療ヘルスケア分野でどのような宇宙ビジネスが生み出せるか?ということも、毎回話し合うようになりました。
宇宙旅行客のメディカルケア?遠隔医療?宇宙での医学実験のプロデュ―スなんかも、必要じゃないの?
実現性についてはひとまずさておき、医療とは関わりのないメンバーの皆さんにも多く集まってもらい、いつもワイワイ楽しく議論を続けてきました。
嬉しいことに徐々に参加メンバーも増え、宇宙天気プロジェクトなどABLabの他プロジェクトとの交流・連携企画や、さらには医学生で自ら宇宙医学論文の解説をしてくれるような人材も現れました。
地上で現実の医療ビジネスを行っている外部企業の方を招いて、ビジネスの実際について熱いお話を聞いたりなんてこともありました。
THINK SPACE LIFEへの挑戦
そんなこんなで、月1回のミーティングと宇宙医学の解説ブログを続けてきましたが、もともと僕らプロジェクトの大目的は「医療ヘルスケア分野での宇宙ビジネスを生み出すこと」です。
アイデア出しは活発に行われても、実現にうつすきっかけがないな…と悩んでいるところに飛び込んできたのが、このTHINK SPACE LIFEのプレスリリースでした!
これまでもJAXAから宇宙医学分野の研究情報提案や、情報提供要請などは募集されていましたが、もともと宇宙の専門家ではない僕たちにはハードルが高い。
しかし、今回は必ずしも宇宙に特化した最先端の技術ではなく、宇宙と同時に地上の社会課題にも生かせるようなアイデアを募集するという。
しかも、人の生活やヘルスケア分野のアイデアが求められるとのことで、自分たちにとってはこのうえない条件の企画でした。
これは乗るしかない!と考え、大急ぎでキックオフミーティングです。
やはり自分たちの活動指針である、医療ヘルスケア分野の課題解決につながる製品を作りたい。
これまでプロジェクトで1年間行ってきた、アイデア出しのワークショップを結実させられるかもしれない大きなチャンスでした。
しかし、〆切までに与えられた期間はわずか2か月弱。
自分たちはまったくのゼロから一体何を生み出せるのか…もちろん不安もありましたが、やるからには本気で採用を目指して真夏の戦いがはじまったのです。
今回はここまで。まだはじまってもいないところで終わってしまい、申し訳ありません。
ついに製品アイデアが生まれるまで途方もない山あり谷ありのストーリーを、これからも連載形式でお届けしようと思います。
ご期待ください!
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