【研究紹介】宇宙天気にとって重要な太陽フレアは、宇宙全体から理解する!?

宇宙天気タイトル

Podcast「宇宙ばなし」でお馴染み佐々木亮さんの「恒星フレア」研究紹介

ABLab宇宙天気プロジェクトでは、皆さんに宇宙天気に興味を持っていただける様に「宇宙天気アウトリーチ」をミッションの柱のひとつとしています。その一環で、宇宙天気の研究をされている方々の御協力いただき、研究内容をわかりやすく紹介しています。

今回はインターネットラジオのPodcast(ポッドキャスト)の「佐々木亮の宇宙ばなし」でお馴染みの佐々木亮さんに宇宙天気に関わりの深い、「恒星フレア」の研究について御紹介いただきました。

NASAで恒星フレアの研究

宇宙天気といえば「太陽フレア」ですが、もっと広い視点で「恒星フレア」として見てみると、宇宙にはもっと巨大でキケンなフレアがたくさん発見されているのをご存知ですか?今回はそんな「恒星フレア」の世界を紹介させていただき、宇宙天気にとって重要な太陽フレアについての理解を深めていただければと思っています。

冒頭からいきなり宇宙の話をはじめてしまいましたが、本題に入る前に、自己紹介をさせていただきます。今回執筆させていただいている佐々木亮と申します。「佐々木亮の宇宙ばなし」というPodcastチャンネル(音声配信)で、「1日10分宇宙時間」をテーマに、毎日最新の天文学の研究や宇宙ビジネスに関する話題を発信しています。

2021年3月に宇宙物理学の分野で博士号を取得し、在学中は理化学研究所、NASA Goddard Space Fright Centerで研究を行っていました。当時の研究対象は「ハイパーフレア」とも言える超巨大恒星フレアでした。国際宇宙ステーションに搭載されている天文観測機MAXIの運用とデータ解析を担当しており、その装置を使った研究によって太陽フレアとは比べ物にならないくらい大きなフレアを研究しておりました。それらはその規模からハイパーフレアとも呼べるほどのものであり、数100発を論文としてまとめ上げました。

自己紹介はこの辺りまでにして、今回は私が研究していた超巨大フレアを紹介します。今回の話の流れをざっくりまとめると、太陽フレアがどれだけ危険なのかを認識した上で、さらに巨大なフレアが発生しうるかを研究する「スーパーフレア」、それをしのぐ超巨大フレア「ハイパーフレア」、それらが太陽フレアとどう関係するか、という流れです。

太陽フレアとスーパーフレア

まずは、基準となる太陽フレアについてです。詳細は宇宙天気プロジェクトでの活動の中で話されている解説に譲りますが、一概に太陽フレアと言っても、その規模は様々です。基本的には、フレアのエネルギーが大きければ大きいほど、地上に出る被害は大きくなります。過去最大級のエネルギーを放出したフレアでは、地上の送電線に異常電流が流れ、発電所で火災が発生するなどの被害が出ています。

多量の人工衛星が地球の周りをとび、電気がなくてはならない今、そのような巨大フレアが発生すると、さらに甚大な被害が予想されます。その中で注目されているのは「太陽でこれまで以上に巨大なフレアが発生しうるのか?」という問です。その問いに正面から立ち向かったのは京都大学の研究チームでした。

より巨大な太陽フレアが発生しうるかを調査するために、京都大学の研究チームは「太陽に似た星」をターゲットに、どの程度まで大きなフレアが発生しているかを調査しました。その結果、360発を超えるフレアを発見しました。それらは太陽に似た星にもかかわらず、過去最大規模の太陽フレアの10倍以上、最大で1,000倍のエネルギーを放射していることが明らかになりました。このように過去最大規模の太陽フレアに比べて10倍以上大きいものを「スーパーフレア」と呼ぶようになりました。

参照ページ)京都大学「研究成果:せいめい望遠鏡でスーパーフレアの検出に成功」

これらのスーパーフレアをまとめ上げた論文によって、巨大フレアを発生させる星の特徴づけがなされ、私たちの生活を支える太陽で、今後これ以上大きなフレアは発生しない、という結論には至らず、未だ巨大フレアが発生する可能性が残る結果となりました。

どこまで大きな太陽フレアが発生しうるか?「ハイパーフレア」

時期を同じくして、私が参加していた国際宇宙ステーション搭載のX線天文観測機MAXIによって、さらに巨大な恒星フレアが複数発見され始めました。MAXIは、180度の視野をもつカメラ2台によって構成されていて、一つが宇宙ステーションの進行方向、一つが天頂方向を向くもので、地球を1周するたびに宇宙全体の写真が1枚撮影できる仕組みになっています。宇宙ステーションは90分で地球を1週するので、1日に16周し、16枚の写真を取ることができます。これによって、前の1周では暗かった星が明るくなった、という単純な仕組みで恒星フレアを発見することに適した観測装置でした。ちなみにこの観測装置MAXIは2022年に再び宇宙へ旅立つ、若田宇宙飛行士が初めての宇宙ステーション長期滞在のときに設置されたものです。

このMAXIの活躍によって、200発を超える超巨大恒星フレアが発見されました。そのフレアのエネルギーは小さいものでも過去最大級の太陽フレアの100倍、最も大きいもので1,000万倍ものエネルギーを放出していることが明らかになりました。スーパーフレアに比べてさらに巨大なこれらのフレアはまさに「ハイパーフレア」と呼べるものでした。太陽の爆発で地球周りの環境に右往左往している私たちに比べると、さらに過酷な環境が存在していることになります。

このようなフレアを起こす星は、太陽系外惑星の探査という第二の地球を探す対象になる星だったり、逆にかなり性質が異なっていて、恒星が二つ連結してくるくる回っている「連星」と呼ばれるものだったりと、様々な種類に及びます。天文学の研究では、こういったたくさんのフレアが見つかると、それらを太陽も含めてマルっと見た時に、同じ性質を持っているのかどうかを調べることがしばしばあります。そのような比較をした結果、フレアによって輝く時の明るさが明るければ明るいほど、長くその爆発は続き、膨大なエネルギーを放出する傾向が明らかになりました。これは太陽も同様の傾向があり、巨大なフレアであるほど長く続きます。この傾向が1,000万倍のエネルギーを放出するハイパーフレアですら同じであることは、太陽フレアを理解する一つの大きな手がかりとなりました。

この中の最もエネルギーが高い太陽フレアの1,000万倍のエネルギーを放出するフレアに関する論文を、私が取りまとめて出版しておりますので、興味がある方は覗いてみていただけると嬉しいです。この中には私がNASAで研究していた時の内容も含まれています。

タイトル:The RS CVn type star GT Mus shows most energetic X-ray flares throughout the 2010s

このような超巨大フレアが宇宙全体で見つかり、それらと太陽フレアに共通の性質が見つかってきているものの、未だに「どこまで大きな太陽フレアが発生しうるか?」という宇宙天気に直結するような結果は得られていません。今後この辺りが他恒星の研究が進んでいくことで明らかになり、宇宙天気に大きな恩恵をもたらす可能性があるので、目が離せない研究分野の一つと言えるでしょう。

1日10分宇宙時間「佐々木亮の宇宙ばなし」

このような最新の天文学の研究の話や、宇宙ビジネスに関する話を「1日10分宇宙時間」をテーマに音声配信しておりますので、ぜひApple Podcast, Spotify, Voicyで聴いてみてください。今回、ABLabプロジェクトリーダーの玉置さんに宇宙天気について、そしてこの宇宙天気プロジェクトについてご紹介いただくゲスト回も公開しています。

Apple Podcast 

Spotify

Voicy

投稿者プロフィール

玉置晋
玉置晋
宇宙天気プロジェクトリーダー。
衛星運用現場の宇宙天気インタプリタ・軌道上技術評価エンジニア。茨城大学で社会人大学院生(宇宙天気防災)。宇宙天気災害から世界を守る仲間を募集中。