ABLab宇宙天気プロジェクト第2期(2023年度~2025年度)スタート

プロジェクト計画書制定

2020年4月に創設されたABLab宇宙天気プロジェクトは2023年4月よりプロジェクト第2期(2023年度~2025年度)がはじまります.

2023年7月15日にABLabメンバー向けの内部会議「第20回宇宙天気プロジェクトミーティング」にて宇宙天気プロジェクト計画書(2023年度版)が承認され,第2期のプロジェクトミッションを定義しました.以下に示します.

背景

第25 期 太陽活動の極大期を前に,学術界・専門家主導のもと,新学術領域研究 太陽地球圏環境予測(PSTEP)総務省 宇宙天気予報の高度化の在り方に関する検討会によって宇宙天気の体系化や宇宙天気予報における警戒レベルの定義化が進められています.一方で、それらを活用して事業リスクに対応する必要がある企業等の経済界や,防災を担う自治体においては,そもそも宇宙天気リスクに対する認知度が低く、知識・技術が圧倒的に不足していることから,宇宙天気予報を活用できる体制が整っていません.このため,実働的に宇宙天気リスクに対処できる社会システムが構築出来ていないというのが現状です.

目的

この「死の谷(アカデミアと社会の分断)」に橋を架けることで,企業や自治体が宇宙天気リスクを認知し,宇宙天気予報を活用して事業や社会活動に生じるリスクに対応できる社会システムを構築することで,社会の安全・安心に貢献します.

図の引用&改変

Tamaoki, S., Saita, K., Hoshi, R., Arvelius, S., Fukumi, Y., Nozawa, S., & Shibata, K. (2022). Space weather casters and space weather interpreters confronting space weather hazard. Journal of Space Safety Engineering, 9(3), 390-396.https://doi.org/10.1016/j.jsse.2022.06.006

課題

この目的に対する現状の課題は以下の3つです.
第一の課題:宇宙天気リスクに対する社会認知の低さ
第二の課題:宇宙天気リスクに対応できる人材の不足
第三の課題:上記2 つを解決できない社会基盤の弱さ.

プロジェクトミッション

これらの課題を解決するために,本プロジェクトでは2022 年度までの活動の中で,以下の 3 つの職域が必要になると判断しました.2023年度から 3 年間の ABLab 宇宙天気プロジェクトのミッションは, 3 つの職域と 1 つの資格認定制度を実装し,社会に根付かせることです.

適切な情報を伝える「宇宙天気キャスタ」

第一の課題の原因の一つに,「宇宙天気のわかりにくさ」がある.この「わかりにくさ」を乗り越えて第一の課題を解決するのが、宇宙天気キャスタです.地上の天気の情報をメディアを通して伝える実績を持つ「気象キャスタ」が宇宙天気の知識を得ることで,宇宙天気キャスタとしてのスキルセットを持ちます.

社会インフラを護る「宇宙天気インタプリタ」

企業における第二の課題を解決するのが,宇宙天気インタプリタです.宇宙天気リスクに対応することが難しい理由の一つが,その社会的影響範囲の広さにあります.これにより,「宇宙天気の専門家」では、すべての社会システムに対して適切な対応を検討できません.そこで,「それぞれの業界の専門家」が宇宙天気リスク対応に必要十分な知識・技術を身に着けて,各自の業界における宇宙天気リスクを評価・対応できるようになることが望ましいです.この人材を宇宙天気インタプリタと呼びます.

地域防災を担う「宇宙天気ローカルレスポンダ」

生活地域で第二の課題を解決するのが,宇宙天気ローカルレスポンダです.どの様な立場の人材が宇宙天気ローカルレスポンダとして機能するのかは,プロジェクト内で議論中です.

また社会的動向として,資格認定制度「宇宙天気予報士制度(仮称)」が検討されています.この資格認定制度によって、第三の課題が解決されると考えます.

2023年度達成目標

「宇宙天気キャスタ」「宇宙天気インタプリタ」「宇宙天気ローカルレスポンダ」とは何か?をプロジェクト内で定義化していきます.また,その結果を関連学会等で発表し,一般化に向けた議論を開始します.

宇宙天気プロジェクトを知るには?

ABLab宇宙天気プロジェクトでは2ヶ月に1回のペースでミーティングを開催しており,プロジェクトの進捗報告や専門家の先生による講演を通して研鑽を努めています.ABLabメンバーならば,どなたでも参加できます.

講演テーマ

・宇宙放射線を計測している衛星たち(第20回 岡橋さん 2023/7/15)

・宇宙防災環境 APP “Apollon’s Eye”(第19回 2023/5/20 日本画像認識 R&D センター代表 藤川恵一さん)

・Space Sustainability Rating-「フォーラム標準」による宇宙環境保全「格付け認証」(第18回 2023/3/18 日本大学 北澤幸人さん)

・宇宙天気に関する法と政策(第18回 2023/3/18 ABLab 永田さん,星さん)

・ 2030 年 宇宙天気予報士から月環境エキスパートへ」(第17回 2023/1/21 ABLab 玉置さん)

・踊る大放射線「人工重力研究と放射線遮蔽検討」(第17回 2023/1/21 大野琢也さん)

・花山宇宙文化財団 宇宙天気講座を受講成果の ABLab への還元(第16回 2022/11/29 ABLab 佐久間さん)

・私の宇宙天気の勉強方法(第15回 2022/9/17 ABLab 石田さん)

・宇宙天気の研究対象が、私達の生活にどう影響するか?(第14回 2022/7/16 ABLab アルヴェリウスさん)

・宇宙天気ガールズを考える(第13回 2022/5/15 ABLab 星さん)

・オーロラとオーロラビジネスの展望(第12回 2022/2/19 ABLab アルヴェリウスさん)

投稿者プロフィール

玉置晋
玉置晋
宇宙天気プロジェクトリーダー。
衛星運用現場の宇宙天気インタプリタ・軌道上技術評価エンジニア。茨城大学で社会人大学院生(宇宙天気防災)。宇宙天気災害から世界を守る仲間を募集中。