ABLabとアジア紙加工研究会で、宇宙×紙の共創イベントを開催しました
2022年3月15日、ABLabの定例イベント「ABLabソリューションズ」を開催しました。
今回は「宇宙の課題×紙の技術」をテーマに「紙で作る宇宙用品」や「宇宙の課題と紙の技術をどう結びつけるか」などについて、アジア紙加工研究会様と合同でディスカッションしました。
ABLabと紙の専門家たちとの熱い議論をご紹介します!
ABLabソリューションズとは
ABLabソリューションズは、メンバーやゲストからの問題提起(悩み、課題、検討中のテーマなど)に対し、ABLabの皆で考え議論しようというオンラインイベントです。「誰かの問題を、みんなの問題に」をキャッチフレーズに、優秀で熱意のある、そしてちょっと破天荒な仲間たちと共にディスカッションします。
具体的には、以下のような流れで進行しています。
- 最初の30分で問題提起。問題を抱えている人の声を聴く。
- 次の30分でグループディスカッション。皆の知見を総動員。
- 最後の30分は共有と雑談。ディスカッションで生まれたものを共有する。
イベント概要
今回のテーマは、「宇宙×紙」。
ABLabとアジア紙加工研究会のそれぞれからプレゼンテーションを行った上で、zoomのブレイクアウトルームに分かれ、「宇宙×紙」をテーマにやってみたいことをそれぞれ自由にディスカッションしました。
タイムテーブル
21:00-21:30 ABLabの紹介・アジア紙加工研究会の紹介
21:30-22:00 ディスカッション「宇宙×紙をテーマにやってみたいこと」
22:00-22:30 全体共有&雑談
宇宙のはなし
ABLabのプレゼンテーションでは、代表の伊藤からABLabの紹介と、宇宙産業の動向についてお話しました。
宇宙ビジネスの実践コミュニティであるABLabでは、全国から集まった様々なバックグラウンドを持つメンバーが宇宙という軸で活動しています。メンバーが自分たちの業界を宇宙産業に巻き込んでいき、さらにそれぞれの業界で宇宙事業に必要な動きを進めていくための場となっています。実際にABLabから事業を立ち上げ法人化したプロジェクトなども紹介させていただきました。
宇宙産業のマーケットはグローバルで急激に拡大しており、今後日本が競争力を高めていく上でも重要な局面にあること。そして宇宙開発は様々な業界にチャンスがあることをお伝えしました。
紙のはなし
アジア紙加工研究会からは代表の中山裕一朗さんにお話をいただきました。
アジア紙加工研究会(以下、アジ研)は、アジアの紙に関わる人・企業、また紙に興味がある方々が集まる交流の場です。紙加工技術に関する最新情報の配信、勉強会やセミナーの定期的開催、ビジネスマッチングなどをされています。日本だけでなくインドやベトナムなど様々な地域からオンラインで集まっているとのことで、今回もインドやタイから参加する方もいらっしゃいました。
商品紹介
アジ研メンバー企業の商品をいくつかご紹介いただきました。お菓子ケース、駅弁等の弁当箱、イヤホンケース、梱包材、緩衝材、紙製ドラム缶など。紙製ドラム缶は初めて知りましたが、利用後に処分し易いというメリットがあります。特に面白かったのが、温度変化や時間経過で色が変わる紙製ラベルです。これを食品のパッケージに貼れば賞味期限が色でわかるそうです。
業界動向
最近注目されている紙技術として、「セルロースナノファイバー」を紹介いただきました。これは紙を細かく砕いてできた無色透明のゲル状のものを固めて作られ、鉄の5分の1の軽さでありながら鉄の5倍の強度を持ちます。実際に国内の大手製紙メーカーでも研究開発投資が加速しているホットな技術です。用途としては、車の車体、スニーカーの靴底、卓球のラケットなど様々な製品に使われています。しかし他素材と比べて高価格であることが課題のようです。
また、昨今ではSDGsの一環として脱プラスチックの素材としても紙が注目されています。例えばボトルや化粧品の容器、カミソリの取っ手部分、ハンガーなど、様々な製品に紙が使われ始めています。宇宙で使われている紙技術としては、福井の越前和紙が宇宙滞在用の靴下として使われていたり、太陽光パネルを広げる技術に折り紙の技術が使われていたりなどがあります。
紙の技術を用いて、地球だけではなく宇宙もサステナブルにしていきたいですね。
グループディスカッション「宇宙×紙」
ABLabとアジ研のメンバーをシャッフルし、zoomのブレイクアウトルームに分かれ、「宇宙×紙」をテーマにやってみたいことをそれぞれ自由にディスカッションしました。そして、ディスカッション終了後、各グループで出た意見やアイデアを全員で共有しました。ワクワクするようなものからアカデミックなものまで、様々な「やってみたいこと」が挙げられました。以下にいくつか抜粋してご紹介します。
- 宇宙でビールを飲みたいので、ビールボトルを紙で作りたい。
- 水耕栽培のように紙を使って植物を育てられないか。
- セルロースナノファイバーや紙は水に弱いけれど、この欠点を逆手にとると、水がない宇宙空間では建築材料に適している可能性があるはず。
- 金属やプラスチックは温度変化による寸法変化が欠点としてあるが、紙は温度による変化がない。これを活用できるのではないか。超真空や放射線の環境下でも物性が変わらないのであれば、宇宙望遠鏡にも活用できるかもしれない。
- 液体を吸収した紙に電流を流したりなどの化学的装置として使えないか。
- 紙は二次利用、三次利用と転用しやすいので、この性質を活用できるのではないか。
- 地球上での宇宙教育や啓蒙活動に紙製クラフトを利用したい。
フリートーク
グループディスカッションを経て、それぞれ考えたこと、思い浮かんだことなどを自由にディスカッションしました。特に、「宇宙での課題をどう解決するか?」という話題が中心になりました。いくつかの話題をご紹介します。
紙による軽量化
紙製にシフトすることで軽量化または省スペース化できるという話題。紙は折り畳むことができるので、畳んで宇宙に持っていき、宇宙空間で組み立てようという話です。ISSで使うような道具も紙で畳んで運べば輸送コストが削減できそうですね。また宇宙葬においても、燃やしてしまうケース等は紙製が良いだろうという意見が挙がりました。
サステナブルな素材として
宇宙空間で発生したゴミや不用品等は大気圏再突入で焼却処分されます。その際にも、環境負荷の低い紙製品に優位性があるという話が挙がりました。
放射線の対策方法
宇宙空間においては放射線の問題もあります。紙は放射線を透過してしまうため、金属や水などのコーティングが必要になるだろうと考えられます。そこで、水と組み合わせることで放射線対策ができるのではないかというアイデアが挙がりました。紙は繊維であり構造上は多孔性になっているため、繊維の間に水を入れることで放射線を防ごうということです。近いうちに、ABLabとアジ研で合同実験を行うことになるかもしれませんね。
まとめ
今回のABLabソリューションズでは、ABLabとアジア紙加工研究会で、「宇宙×紙」のディスカッションを行いました。本記事ではその内容をいくつか抜粋してご紹介しましたが、様々な意見交換ができ、お互いにとって非常に有意義な機会となりました。
イベントの中締め後もしばらく雑談が続き、「宇宙食の中でも日本食は人気」「針葉樹で作られた紙は広葉樹で作られた紙よりも破れにくい」など様々なネタが飛び交い、ABLabメンバーは紙について、アジ研メンバーは宇宙について、より詳しくなれたのではないでしょうか。
アジア紙加工研究会の皆様、この度はご一緒できて楽しかったです。これを機に、宇宙産業×紙産業の共創を推進していきましょう!
ABLabとコラボしたい企業、団体を募集してます!
今後もABLabでは、毎月オンラインイベントを開催し、メンバーやゲストのやりたいことや問題について一緒に議論していく予定です。ABLabと一緒に議論したい企業や団体を募集しております。ぜひ、お問い合わせフォーム等からご連絡ください。
投稿者プロフィール
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ABLabの秘書兼広報。
現役大学生ですが、宇宙へのアツさは人一倍!
「たくさんの人に宇宙、宇宙ビジネスの魅力を伝えたい」という思いで日々、運営業務や情報発信のお手伝いをしています。
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