【カフェバー流れ星】ヘアメイクアーティスト寺岡慎太郎代表に宇宙美容をインタビュー

　2023年6月22日に開催された宇宙ビジネスの交流イベント「Cafe & Bar 流れ星」は、一般社団法人宇宙美容機構/代表理事の寺岡慎太郎さんがゲストスピーカー。「宇宙で暮らす未来」をテーマにトークセッションを行いました。

　宇宙美容のスタートアップ立ち上げから四年。いま宇宙美容ではどんな議論が行われているのか、最先端で活躍する寺岡さんの活動を伺いました！

ダイジェスト版ショート動画（約1分）

　まずはダイジェスト版のショート動画をご覧ください。

実は遠くない、宇宙と美容の距離

　現在は、一般社団法人宇宙美容機構/代表理事と会社経営する、現役のヘアメイクアップアーティスト。2019年に宇宙系のスタートアップを始め、2021年には一般社団法人を立ち上げました。

宇宙美容機構はどんな活動をしているのですか？

　11社の企業と共創プロジェクトをしています。主な活動は「宇宙美容が何をしていくのか」というビジョン作り。2025年など少し先の社会課題を解決し、未来を作っていくシナリオやロードマップを作っています。

　例えば「宇宙でヘアカットをしてみたいね」という話題はたくさん出てくるのですが、どうしたら具体的に進められるのかということが分からず、行動に移せていないのが現状。そこで情報を集め、データベースを作っていますが、何をすべきかも同時に洗い出しています。そこから発展し「どうやって髪を洗うのか？ヘアカットするのか？メイクをするのか？」などリソースが限られた宇宙環境で、快適に過ごせることも視野に入れた議論をしています。また年に二回宇宙美容のシンポジウムを開催したり、【MIRROR】という宇宙美容の雑誌発刊や、学生向けのイベントにも取り組んでいます。

そもそも宇宙美容とは？

　実は美容の定義はけっこう広いです。メイクだけでなく、髪や顔を洗うこと、体を洗うことなども美容に関わる要素なので、生活のあらゆる側面が美容と繋がっています。おなじ専門家のあいだで議論をしているのは、テクノロジーの進化によってカンタンに美しくなれる時代には、「美しさ」や「可愛いさ」の希少性が低くなるということ。そのため内面や精神性、ホリスティックな面も美容の範囲に入ってくると考えており、ヨガをしたり気持ちを整えたりという活動も美容の一環となるかもしれません。

　美容は宇宙とほど遠いイメージですが、実はもう宇宙では美容は行われています。しかし、あまりに日常的で身近なものなので美容と認識していない。スペシャルなことと思われがちですが、とても身近で重要な課題があると捉えています。

宇宙美容を始めようと思ったきっかけは？

　漫画やアニメから入ったわけではなく、美容という仕事にどっぷり携わって人を綺麗にしているあいだに「外見以外の美しさがある」と感じ、深く考えるようになりました。また、人々の働き方や生活が大きく変わりつつある時代の中で、美容業界の将来について話し合うようになりました。「5年後、10年後はきっと宇宙へ行っているだろう」と思い情報を探しましたが、なかなか出てこない。「これは面白い」と思い、行動するに至りました。

月面生活での美容とは？

　2040年後半に月は工業都市になると言われていますが、さまざまな疑問が湧きます。地上と同じことが行えるのか？月でコスメの製造が行えるのか？地上でできることを人は月でも求めるのか？そもそも違うことをやりたくなるのか？などです。現状は宇宙へのモノ輸送コストが1kg1億円と言われているので、宇宙農業の栽培で美容成分が月で作れるのかどうかも、興味があります。　

　また宇宙での恋愛は、あまり議題に上がっていません。恐らく閉鎖環境でのトラブルを防ぐためにタブーになっていると思いますが、月に1,000人が住むようになるとコミュニティで恋も愛も生まれるのは自然なこと。地上とは違う閉鎖環境で、美容行為がコミュニティ維持のために必要なのかという、プラス面とマイナス面を事前に議論する必要もあると思います。

どこで情報を集め、どうプロジェクトを進めていくか？

　ABLabではスペースコロニーラボというプロジェクトをスペースデータさんと立ち上げ、宇宙に暮らす未来を作るための取り組みを始めたと伺いました。そういった人が集まったりする場所で既存の情報を集め議論することは、とても大切だと思います。急に会社で新規事業開発や宇宙の部署に割り当てられたとき、そもそも情報がどこにあるのかさえも分かりませんし、情報の質を判断することも難しい。その作業自体が非常に大変ですが、そこから何が正しいのか、何をしていくべきかと考えることがそもそも活動の本質だと思います。

　個人的に宇宙の取り組みで大切にしているのは「一緒に考える」ということ。とある業界の専門家がすごい装置を作ったけれど、他の業界の人からすると使いにくいというのはよくあること。いろいろな業界のスペシャリストが同じテーブルで会話をできるようになっていくのは、とても大事です。空気の流れは肌の乾燥や変化に深く関わりがあるので、そういった議論もたくさんしていきたいですし、物理学の話も参考になることばかりで論文を読むのもとても楽しいです。

直近では、どんな取り組みをされていますか？

　宇宙旅行へ行く予定の方に、データの収集をさせて頂くことが一つ。また宇宙関係の方の撮影やビジュアルのサポートも行っていきたいです。大きいところですと、2024年に実験ができるコンソーシアム（共同事業体）作りを進めています。

　共創の良い面は議論や創り上げるものの質が高まることですが、どうしてもスピードが遅くなる面もあります。特に大手企業同士だと一緒にやりづらいところも出てきますので、そこは個別で対応し、スピードアップをしていきます。2024、25年はそういった活動を海外へも広げていく予定です。

　直近では、7月8日に日本橋でシンポジウムも開催。ABLabさん、コスモ女子さん、リーマンサットさんなど、宇宙コミュニティを代表する方々に登壇していただき、宇宙を盛り上げる活動や課題をディスカッションします。また初めての取り組みですが海外からゲストを招き、理事の森が宇宙ビジネスや宇宙ステーション、民間の有人宇宙開発に関するディスカッションを行います。

カフェバー流れ星とは

　カフェバー流れ星は、月に一度だけ開く、宇宙または宇宙ビジネスに関心を持つ人が集うカフェバー。と言っても実店舗があるわけではなく、イベントスペースを借りて一晩限りの交流の場を提供する交流イベントです。

宇宙ビジネスの実践コミュニティ「ABLab」が運営し、宇宙の仲間作りを支援しています。宇宙や宇宙ビジネスに関心のある方ならどなたでもご参加いただけます。ABLabのスタッフがホストとして、ゲストの皆様の新しい出会いや交流をお手伝いしています。これまでも様々なプロジェクトやコラボレーションのきっかけを促してきました。