宇宙天気の人を育め!(1)宇宙天気キャスター

2024年5月11日に日本で赤いオーロラがみえた!5月8日から太陽の表面で発生する爆発現象、「太陽フレア」が複数回発生し、これに伴い太陽の上層大気であるコロナが吹き飛ぶ「コロナ質量放出(CME)」の波がいくつも地球の磁気圏に衝突したことが今回の嵐を発生させました。今回の様な太陽活動による宇宙環境の乱れは社会インフラや人間活動に様々なダメージを与えることがあります。そのような太陽から超高層大気に至る領域の状況は宇宙天気(space weather)と呼ばれています。今回の宇宙天気の影響については、報道等で徐々に明らかになってきましたが、大きな災害にはならなかった事に安堵しています。

ABLab宇宙天気プロジェクトは文明進化型の「宇宙天気災害」に備える職域や人材を育むことをミッションとし、2020年から活動しています。あれから3年が経過し、私達がこれまでに蒔いた種が芽吹き始めています。

気象キャスター×宇宙天気=宇宙天気キャスターの誕生

宇宙天気の情報には「プロトン現象」「地磁気嵐」「電離圏嵐」など聞きなれない専門用語がたくさん出てきます。宇宙天気のわかりにくさは、宇宙天気リスクに対する社会認知の低さの原因の一つでした。この課題を解決するのが宇宙天気キャスタです。私達は地上の天気の情報をメディアを通じて伝える実績を持つ気象キャスタが対象領域を宇宙天気に拡張することで、他の自然災害と比較した形で情報を発信することが可能になると考えています。既にある熱中症や紫外線情報などと同様に天気予報の一部として伝えることができれば、社会に浸透するかも?

ABLab宇宙天気プロジェクトはこれを実現すべく、2023年度より茨城大学理学部の野澤恵先生が中心に進めている「宇宙天気予報を深化させた宇宙天気インタプリタ育成カリキュラムの開発」(科研費基盤C:2023年度~2027年度)の立ち上げに協力しています。そして、この科研費プロジェクトの一環で NPO法人 気象キャスターネットワーク様を中心に「宇宙天気予報の作り方for気象キャスターネットワーク」の開講に至りました。本講座では日本の宇宙天気研究の第一人者である柴田一成先生、小原隆博先生に御指導いただいています。今回のオーロラ出現においては、この講座で宇宙天気を学んだ気象キャスターの皆さんが冷静な情報発信を行ってくださいました。2024年5月に実践的な宇宙天気キャスターが誕生しました。

宇宙天気キャスターと同様に様々な分野の専門家が宇宙天気災害への減災や復興に貢献する世界を望んでいます。次回の記事では法律家×宇宙天気にフォーカスします。

投稿者プロフィール

玉置晋
玉置晋
宇宙天気プロジェクトリーダー。
衛星運用現場の宇宙天気インタプリタ・軌道上技術評価エンジニア。茨城大学で社会人大学院生(宇宙天気防災)。宇宙天気災害から世界を守る仲間を募集中。