宇宙天気プロジェクトの全てを聞いた!(前編)

皆さんは宇宙天気という言葉を知っていますか?

2021年度前期に放送された連続テレビ小説(朝ドラ)「おかえりモネ」でも登場した宇宙天気、実は今、まさに急激に注目度が高まっているのです!

今回は、そんな宇宙天気の勉強、普及に、日々走っておられる宇宙天気プロジェクトの2名の方々にお話を伺いました。

インタビューさせていただいたのはこちらの方々です。

玉置 晋 さん :宇宙天気プロジェクトリーダー
民間の衛星運用会社のエンジニアで軌道上技術評価を担当。
人工衛星の健康状態を日々チェックする一方、茨城大学で社会人学生として宇宙天気の研究にも従事している。
斉田 季実治 さん :宇宙天気プロジェクトマネージャー
NHKニュースウオッチ9の気象キャスター。
朝ドラ「おかえりモネ」で気象考証を担当した。
もともと宇宙が好きで、星空案内人の資格を持っている。

宇宙天気プロジェクトを始めたきっかけは何ですか?

玉置さん

きっかけは今から20年ほど前に遡ります。

仕事を始める前、大きな太陽フレアが起きて人工衛星が壊れてしまったという出来事がありました。

当時、日本の宇宙開発は失敗が続いていたこともあって、この太陽フレアの出来事が重なり宇宙開発が一旦止まってしまったんです。

そして宇宙開発の採用もなくなってしまいました

無事に仕事に就くことはできたのですが、この出来事が「宇宙天気って大事だな」と思ったきっかけだったように感じています。

そんな出来事があったのですね。
就職活動にも影響してしまうとなれば、困った方も多かったんじゃないかと思います。

玉置さん

でも実際当時は宇宙天気が情報として使われておらず、大事だと理解されることもありませんでした。

なぜかというと宇宙天気自体が仕事、ビジネスとして成立しないからです。

そこで、このABLabという場所に目を向けました。ABLabはビジネス未満のものを成長させる場だったので、宇宙天気を投入するにはちょうど良い場だなと思い、プロジェクトを立ち上げました。

斉田さん

私は一昨年の春からABLabに入ったのですが、ちょうど、玉置さんが宇宙天気プロジェクトを立ち上げるタイミングだったんです。

宇宙飛行士になりたかったくらい宇宙がもともと好きで、ずっと宇宙に関わる仕事もしたいと思っていました。

ですので、専門である「天気」と大好きな「宇宙」を掛け合わせた宇宙天気プロジェクトに参加することはとても自然なことでした。

宇宙天気に関しては、何か学びたいと思ったきっかけなどあったのでしょうか。

斉田さん

星空案内人の資格を取るときに広くて浅い知識は勉強していたのですが、その中で専門的な分野として宇宙天気をより深めていきたいと思うようになりました。

宇宙天気についてはオーロラの研究をしている方と知り合いだったので、前から知っていたんです。

なるほど、そうだったのですね。
気象予報士さんの中で宇宙天気に対する認知度はどれくらいなのでしょうか。

斉田さん

大規模な太陽フレアがあると、日本でも北海道でオーロラが見えることがあるので、そのことを天気予報で伝えているキャスターは見たことがあります。ただ、基本的には知らない人がほとんどですね。

まだまだ認知度は高くないので、私が最初に宇宙天気について詳しくなり、宇宙天気キャスターとして皆さんに広めたいです。

具体的にはどのような活動をされていますか?

斉田さん

二ヶ月に一回、宇宙天気に関する勉強会を開いています。

他には論文を書いたこともありました。

また、プロジェクト内だけでなく、外にもABLabとして活動の場を広げています。例えば、NICTの宇宙天気ユーザー協議会にも参加しています。

宇宙天気ユーザー協議会とは何でしょうか?また、その中ではどのようなことをされていますか?

玉置さん

宇宙天気ユーザー協議会では、宇宙天気の情報を提供する研究者とその情報を使う企業や人が、宇宙天気データの適切な利用について検討しています。

宇宙天気に関わる業界の方々が集まっており、具体的には、人工衛星関係、航空業界、電力業界、測位分野など。

宇宙天気の予報を出しているNICTがメインとなっています。

斉田さん

プロジェクト1年目はこの宇宙天気ユーザー協議会に入ることが目標でした。

まず、知ってもらうことが大事だったからです。学会発表や論文書きをすることで、一昨年末にABLabとして協議会に入ることができました

玉置さん

宇宙天気ユーザー協議会には衛星分科会、航空分科会、アウトリーチ分科会の3部門があるのですが、現在は、斉田さんがアウトリーチ分科会の会長を務めるまでになりました。

すごいですね!

斉田さん

プロジェクト2年目の時、アウトリーチの重要性をプレゼンしてから一気に動き出したように感じます。

プレゼンをしてその数ヶ月後に分科会長に任命されたので正直びっくりしました。

今までは研究と予報を中心に企業のニーズのマッチングを行っていたため、アウトリーチにまで手が回っていなかったようなのです。

次期ひまわりが太陽側のデータをとるための宇宙天気センサーも載せるということで衛星分科会が立ち上がったのですが、航空業界が被曝について意識し始めたことも相まって、アウトリーチにも力を入れることになりました。

日本全体として、今後ますます宇宙天気に関する活動が活発化していきそうですね!

斉田さん

そうですね。去年は宇宙旅行元年とも言われますし、また宇宙飛行士の募集も始まりました。

これらと一貫して、総務省で「宇宙天気予報の高度化のありかたに関する検討会」が始まったのですが、そのメンバーにも私が急遽入ることになりました。

既に第一回が行われまして、本当に急激に動いている感じがしています。

玉置さん

私たちの狙い通りに世の中が動いていますよね。私自身、とてもワクワクしています。

お話を聞いていて私もワクワクしてきました。
実際、アウトリーチをする上では、認知度を高めていくために凝らした工夫などあったのでしょうか?

玉置さん

面白い企画としては、3分宇宙天気というものがあります。

宇宙人クラブさんとコラボで、斉田さんが宇宙天気キャスターとして、私は宇宙人キャスターとして(笑)、3分間宇宙天気のことを話す機会をいただいています。

宇宙人クラブさんとの繋がりも大きいのですね。

玉置さん

はい。とても仲良くさせていただいています!

他にも「○○語で学ぶ宇宙天気」という企画もやっていて、外国語で宇宙天気について解説してもらっています。

中国の方やルクセンブルグの方に来ていただきました。

今後はNASAの方にも来てもらえるのでないかとワクワクしています。

現在はどのような方々がプロジェクトに参加して活動されていますか?

玉置さん

色んな方がいらっしゃいます。

プロジェクトマネージャーの斉田さん、プロジェクトリーダーの私の他に、海外に住んでおられる研究者の方や、放送業界で技術者をされている方、またもともと大学では違うことをやっていたものの宇宙天気にとても関心がありライフワークとして活動してくださっている方もおられます。

全員が初めから宇宙天気に詳しかったわけではなく、メンバーの中には宇宙天気という存在をそもそも知らなかった方もいらっしゃるのですよ。

本当に多種多様な方々がいらっしゃいますね。

 玉置さん

そうなんです。他にも、 ABLabの他のプロジェクトを立ち上げている方々が関わってくれています。ロケットガールズプロジェクトでは、宇宙天気ガールズというキャラクターまで作っていただきました。

他にも声をかければ、多くの方が協力してくださります。

斉田さん

最近は忙しくなってきたので、もっと多くの方々に宇宙天気プロジェクトに参加していただきたいですね。

具体的にはどんな方に来ていただきたいですか?

玉置さん

いろんなジャンルの方に来て欲しいです。そしてこの多様性が宇宙天気プロジェクトの強みになるはずです。

キーワードとしては宇宙天気×〇〇ができる人です!

斉田さん

そうですね。現段階では宇宙天気に関わっている場所といえば、研究中心のところが多くなってしまいます。

でもこれからは「宇宙天気をどう社会に実装していくか?」を考えなければいけません。

そのためには、実際に職業をしている人が関わって提言していくことが大事。

色んなジャンルの人がいることは、本当にABLabの強みになるはずです。

色々なバックグラウンドを持った方に来ていただけると嬉しいですね!
みなさま、お待ちしております!

まとめ

宇宙天気プロジェクトの全てを聞いた!(後編)では、朝ドラ「おかえりモネ」の話や宇宙天気プロジェクト、宇宙天気の今後についてお伝えします。

投稿者プロフィール

ゆい秘書/広報
ABLabの秘書兼広報。
現役大学生ですが、宇宙へのアツさは人一倍!
「たくさんの人に宇宙、宇宙ビジネスの魅力を伝えたい」という思いで日々、運営業務や情報発信のお手伝いをしています。