宇宙天気ハザードに立ち向かう3人の専門家
ABLab宇宙天気プロジェクトは,宇宙天気ハザードに立ち向かうには3つの職域の連携が必要だと考えています.社会インフラが高度に電気を利用し,宇宙進出が進んでいる現代社会.宇宙天気が社会に与える影響,特に社会インフラへの被害は,顕在化するだけでなく,社会インフラの複雑性とその規模に応じて,複雑化・拡大化すると考えられます.こうした宇宙天気ハザードに立ち向かう鍵は,宇宙天気研究者,宇宙天気キャスター,宇宙天気インタプリタの緊密な連携です.
お話 「 宇宙天気と ドローンを使った フードデリバリ会社の社長 」
①宇宙天気現象とその影響を研究する「宇宙天気研究者」と死の谷問題
宇宙天気に関する基礎研究は,これまでも,そしてこれからも研究者によって貢献され続けるでしょう.ABLab宇宙天気プロジェクトでは,研究者のみなさんの成果をどうにかして社会還元できないかと考えています.その中で出てきた課題として,宇宙天気研究と社会の間には2つの大きな認識の不一致があり,私達は宇宙天気の「死の谷」と呼んでいます.一つ目の死の谷は,宇宙天気の社会的影響が十分に解明されていないことです.解明の為には,研究者と社会インフラの現場の連携が必要となります.二つ目の死の谷は,一般の人々と研究者のコミュニケーション不足です.一般の人々が宇宙天気のリスクを認知していない場合,宇宙天気に関する政策的な対応についてコンセンサスを得られにくくなります.この対応策として,宇宙天気インタプリタと宇宙天気キャスタが力を発揮することになります.
②わかりやすく正しい宇宙天気情報をお茶の間に伝える「宇宙天気キャスタ」
宇宙天気キャスタは,宇宙天気情報を正確に,わかりやすく,お茶の間に伝える役割を担います.近い将来,宇宙天気キャスタは、気象予報士が地上の天気について行うように,宇宙天気を毎日説明することを期待しています.宇宙天気キャスタがメディアで災害情報学に基づいた宇宙天気の正しい情報を伝えることで,お茶の間で,宇宙天気政策の重要性と政策に対する信頼を持つきっかけになることを期待します.ABLab宇宙天気プロジェクトでは,既に地球上の天気をお茶の間に伝えるプロフェッショナルである,気象予報士資格を持った気象キャスタが,対象を宇宙に拡張し,地上から宇宙までシームレスな天気を扱うことを想定しています.
③社会インフラを守る「宇宙天気インタプリタ」
宇宙天気インタプリタは、宇宙天気の状況を分析し、宇宙天気災害が企業活動や行政サービス、日常生活に及ぼす悪影響を事前に回避または軽減するためのスキルセットで問題を解決するキープレーヤーです.宇宙天気の社会影響評価には社会インフラシステムの複雑性に関する知識を持つ高度な専門知識が必要なため,研究者と社会の間で適切なコミュニケーションを担う人材が必要となります.宇宙業界,航空業界,航法・測位・時刻同期業界,電力業界などそれぞれの業界に特化した宇宙天気インタプリタが必要になると考えています.また,宇宙天気予報機関や保険業界においては,すべてのリスク分析に関与する総合型の宇宙天気インタプリタのスキルセットが要求されることでしょう.ABLab宇宙天気プロジェクトでは,宇宙天気インタプリタのシステムデザインの検討を進めています.
ここで書いた記事は,2022年に国際論文誌の「Journal of Space Safety Engineering」に掲載された「Space weather casters and space weather interpreters confronting space weather hazard」および2022年11月に開催の「5th ISEE Symposium Toward the Future of Space-Earth Environmental Research」でのポスターセッションのプレゼンに基づきます.
宇宙天気ハザードに立ち向かう3人の専門家.もしかしたら,あなたがその一人かもしれませんよ.
投稿者プロフィール
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宇宙天気プロジェクトリーダー。
衛星運用現場の宇宙天気インタプリタ・軌道上技術評価エンジニア。茨城大学で社会人大学院生(宇宙天気防災)。宇宙天気災害から世界を守る仲間を募集中。
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