宇宙天気プロジェクトの全てを聞いた!(後編)

今、注目を集めつつある宇宙天気。

今回は、ABLab宇宙天気プロジェクトの2名の方々にお話を伺いました。

宇宙天気プロジェクトの全てを聞いた!(前編)では、そんな宇宙天気プロジェクトの全容をお伝えしています。

宇宙天気プロジェクトの全てを聞いた!(後編)では、連続テレビ小説(朝ドラ)「おかえりモネ」の影響や、宇宙天気の今後について語っていただきました。

玉置 晋 さん :宇宙天気プロジェクトリーダー
民間の衛星運用会社のエンジニアで軌道上技術評価を担当。
人工衛星の健康状態を日々チェックする一方、茨城大学で社会人学生として宇宙天気の研究にも従事している。
斉田 季実治 さん :宇宙天気プロジェクトマネージャー
NHKニュースウオッチ9の気象キャスター。
朝ドラ「おかえりモネ」で気象考証を担当した。
もともと宇宙が好きで、星空案内人の資格を持っている。

「おかえりモネ」のお話が聞きたいです!

斉田さん

「おかえりモネ」では、私は気象考証と言って、ドラマの内容が気象関連の面において正しいのかをチェックする仕事をしていました。

その内容の中で、気象会社の新規事業プレゼンのシーンがあるのですが、ボツ案の一つとして、宇宙天気を入れることを提案してみたのです。

本当は宇宙関連の違うネタだったのですが、「せっかく気象予報士の話だし宇宙天気の方が良いのではないでしょうか。」と。

本当は違うネタだったなんて、驚きです。

斉田さん

私たちで変えることができましたが、そもそも宇宙天気自体があまり知られていなかったのだと思います。

実は本当は私がプレゼンもしてみたかったのですが…それは叶いませんでした。(笑)

(笑) 反響の方はどうでしたか?

玉置さん

反響はかなりありましたね。

今まで宇宙と関わってこなかった人からも、「おかえりモネ」を見て、「あれが宇宙天気ですか?」というような話が出るようになりました。こんなことは20年間なかったので、嬉しくて仕方がありません。

斉田さん

そもそも気象予報士を題材にしたというだけでも気象界で反響が大きかったんです。

実際に、気象予報士の受験者が激増しました。興味を持ってもらえたようで嬉しいですね。

宇宙天気プロジェクトとして、今後の目標は何ですか?

斉田さん

私たちの活動では、宇宙天気キャスタの創設、宇宙天気インタープリタの普及、そしてアウトリーチ活動と、大きく3つのことを軸にしています。

そもそも宇宙天気を知らない人が多いので、現在はアウトリーチ活動に力を入れており、取材を受けたりテレビ放送で宇宙天気について話したりしています。

ですが、私一人では限界があります。

そのためにはアウトリーチをしてくれる人をもっと増やしたいと思っています。

具体的にはどのようにして人を増やすのでしょうか。

斉田さん

気象キャスターネットワークという組織を巻き込もうとしています。
まずは、気象キャスターネットワークの方に宇宙天気ユーザー協議会(前編参照)にも入ってもらいました。
そうすることで、気象キャスターの皆さんが宇宙天気に興味を持つ切っ掛けが作れると考えたのです。

気象キャスターには防災の知識もありますし、何よりメディアで活躍している人が多いので、テレビやラジオでどんどん宇宙天気について話して欲しいのです。

近い将来、気象予報の一環として宇宙天気予報が聞けるかもしれませんね。
一般人が宇宙天気予報を気にする状況としては、具体的にはどのような場合があるのでしょうか。

玉置さん

そうですね、私たちへの影響として大きいのは電力GPSが挙げられます。

2017年の9月におきた太陽フレアでは実際にGPSの誤差が増えました。ただ今は多少の誤差は補正してくれるようになっているので、ユーザーとしては影響が大きくはなかったかもしれません。

今までに大きな影響が出たことはあるのでしょうか。

玉置さん

20年ほど前の太陽フレアでは、飛行機が着陸できなくなったという出来事がありました。ちょうど航空機にGPSを使い始めた頃だったんです。

また、地上の電力網が破壊されるリスクもあります。

電力がストップしてしまうとかなりの影響が出そうですね。
やはり、わかりやすく伝えることのできる宇宙天気キャスタがますます重要になりそうです。
宇宙天気キャスタの養成にはどのような形で取り組まれているのでしょうか。

斉田さん

宇宙天気は大学で学ぶことではないので、宇宙天気の学習カリキュラム作りをやっています。

学ぶためには時間もかかるので、まずは「現象を理解して正しく伝えられるレベルはどこまでだろうか?」ということを考えています。

いずれは気象予報士のように予測までできるようになると良いですね。

今後、宇宙天気はどのように活用できますか?

玉置さん

宇宙天気の影響として航空機の被爆、衛星の故障がありますが、まずはそのリスク管理の中で活用が進んでいくと考えています。

ですので初めに産業化していくのは保険会社ではないでしょうか。

実際にユーザー協議会にも保険会社が入ってきています。

斉田さん

そうですね。まずは宇宙天気の影響を第一に受ける産業の中でビジネス化が進んでいくでしょう。

その後、一般のユーザーの中で活用が広がっていくと考えられます。

まずはリスク管理の中で活用が進んでいくのですね。
ますます民間による宇宙旅行が活発化し、一般の人が宇宙に行くようになると状況も変化しそうです。

玉置さん

被曝面では地上で生活している中では影響はないので、現在は飛行機の乗務員などの間での活用となりますが、人間の活動がより宇宙へ広がっていくと宇宙天気の影響も進んでいくでしょう。

斉田さん

GPSへの支障の観点では、ドローンや車の自動運転が進むと一般の人にも影響が出てくるかもしれませんね。

月面社会が形成された将来においては、宇宙天気のサービスを提供する先はどこになるのでしょうか?

玉置さん

地上の気象サービスと同等のものが宇宙天気でも要求されるのではないかと思います。

現在の気象サービスの規模ですので、多岐に渡るような気がしています。

斉田さん

私は、防災や人命に関わる部分に関しては国がサービスを利用する割合が増えるのではないかと思います。

逆に、国が関わることで初めて宇宙進出が前に進むのではないかと。

想像以上に宇宙天気の知識は宇宙進出に重要で、宇宙天気によって、宇宙に出た途端に製品が動かない、なんてこともありうるのです。

玉置さん

私もそう思います。

宇宙デブリがよく話題になっていますが、宇宙天気も同等に大事なのです。

斉田さん

月まで行くと宇宙天気がよりかなり大事になりますね。

宇宙天気とは!?

最後に、玉置さん、斉田さんにとって宇宙天気とは何か、お聞きしても良いですか?

玉置さん

私にとって宇宙天気とは、「人生を阻むもの」です。

いつか宇宙天気を倒してやろう、そんな気持ちで日々励んでいます!

斉田さん

逆に私は、「もう一度夢を抱かせてくれたもの」です。

子供の頃の夢が宇宙に行くことだったので、宇宙天気がもう一度私を宇宙に引き戻してくれました。

宇宙天気をやりつつも将来はまた宇宙に行きたいという夢を、もう一度抱かせてくれたのです。

お二方とも、とても素敵です。
本日は貴重なお話をしていただき、本当にありがとうございました!

まとめ

今回は、プロジェクトリーダー、プロジェクトマネージャーとして活躍されておられる玉置さんと斉田さんに、宇宙天気プロジェクトのきっかけから今後の展望まで、たくさんのお話を伺うことができました。

今後もますます忙しくなりそうな宇宙天気プロジェクトから目が離せませんね。

全ての産業は宇宙に関わる!それはきっと宇宙天気も。

ABLabには様々な方が活躍しています。
是非、あなたもABLabに参加して、宇宙天気プロジェクトに関わってみませんか?

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投稿者プロフィール

ゆい秘書/広報
ABLabの秘書兼広報。
現役大学生ですが、宇宙へのアツさは人一倍!
「たくさんの人に宇宙、宇宙ビジネスの魅力を伝えたい」という思いで日々、運営業務や情報発信のお手伝いをしています。